サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度とは?企業が直面する課題と、いま必要な対策をわかりやすく整理
近年、サイバーセキュリティ対策は経営上の重要課題となっており、その影響はもはや「自社だけの問題」ではありません。取引先や委託先を起点とするサプライチェーン型攻撃は、事業継続に直結するリスクとして強く認識されています。
「急ぎで、貴社のセキュリティ評価を提出してもらえますか?」といった取引先からの問い合わせは、2026年以降、決して珍しいものではなくなるでしょう。しかも多くの場合、十分な準備期間がないまま対応を迫られます。
一方で、サプライチェーンにおけるセキュリティ対策状況は、外部から把握しにくい点が長らく課題とされてきました。こうした状況を受け、自社だけでなく取引先や委託先を含めたサプライチェーン全体の対策状況を、“制度として客観的に見える化”する動きが本格化しています。
その背景にあるのが、経済産業省が検討を進める「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」です。同制度では、★3〜★5の段階評価が検討されており、★3・★4は2026年度末頃の制度開始を目指して検討が進められています。
2026年2月時点では義務化や取得の強制は明示されていないものの、今後はサプライチェーンの「取引・調達・監査」の各場面で、同評価制度が取引条件として参照される可能性があります。
本記事では、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の全体像と具体的な評価項目、企業が直面する課題と対策、取り組むメリットについて解説します。
出典:1.サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案)について|経済産業省
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◆「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」とは?(まずは全体像)

「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」とは、企業のサイバーセキュリティ対策状況を一定の基準で評価・可視化し、サプライチェーン全体のリスク低減を図るための制度です。
2025年12月26日、経済産業省および内閣官房国家サイバー統括室によって公表されました。2026年度末頃の制度開始の予定に向け、検討が進められています。
同評価制度が検討されている理由として、近年、委託先や取引先を起点としたサプライチェーン攻撃が急増し、自社単体の対策だけでは事業継続リスクを防ぎきれない状況が顕在化していることが挙げられます。
一方で、従来主流だった書面アンケートや自己申告による確認では、実態との乖離や形骸化といった課題も指摘されてきました。こうした背景から、本制度では第三者による評価や、外部から見た対策状況(外形評価)を取り入れた仕組みが採用されています。
同評価制度の種類は、大きく以下の3つです。
- ● 自己診断 × 第三者評価
- ● 書面評価 × 外形評価(外部からの見え方)
- ● 単発評価 × 継続モニタリング
自己診断と第三者評価の併用、書面評価に加えた外形評価、そして単発ではなく継続的に状況を把握するモニタリング型評価が行われる点が特徴的です。
発注元企業が委託先に対して適切な評価段階を提示し、実施状況を確認する流れが想定されるため、今後の取引・調達・監査では、セキュリティ評価を前提とした関係構築が標準となっていくと考えられます。
出典:1.サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案)について|経済産業省
◆「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では何が評価されるのか?評価項目の基本

「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、企業のセキュリティ対策を外部から客観的に評価し、サプライチェーン全体の安全性を高めることを目的としています。特徴は、内部申告に依存せず、外形情報の可視化と継続的な評価を重視している点です。
ここでは、同制度の主な評価項目と評価スキームについて詳しく解説します。
技術的対策|外部から観測可能なシステム防御状況
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、企業が運用するシステムやネットワークの防御状況が評価対象となります。
具体的には、設定不備の有無、証明書の適切な管理、既知の脆弱性への対応状況、不要なポートの開放など、外部から観測できるリスクが評価対象に含まれます。そのため、内部で「対策しているつもり」では不十分であり、第三者の視点から見て安全な状態が維持されているかが問われます。
侵害兆候|ボットネットやマルウェア通信の有無
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度の評価項目として、防御策を講じているかだけでなく、「すでに侵害されていないか」という点も重視されます。
例えば、ボットネットとの通信やマルウェア通信などの侵害兆候は、外部観測によって検知可能な重要指標です。過去に問題がなかったとしても、継続的に監視し、異常があれば迅速に対応できる体制を構築できているかどうかが評価軸となります。
組織的対策|運用・ガバナンスの実効性
同制度では、サプライチェーン全体のセキュリティ技術対策を支える基盤となる「組織的対策」の整備状況も評価されます。具体的には、パッチ管理の運用ルール、役割と責任の明確化、インシデント発生時の対応手順、経営層の関与などが評価対象です。
なお、サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度では、単に対策内容が文書化されているだけでなく、「実際に機能しているか」「継続的に改善されているか」といった点も検証されます。
外部公開情報|インシデント履歴と漏えい情報
過去に発生したセキュリティインシデントや、漏えいした資格情報などの外部公開情報も、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の評価に含まれます。
これらは取引先や社会から見た信頼性を判断する材料となるため、再発防止策や改善状況まで含めて評価されます。過去の事実としてではなく、再発防止策や改善の取り組みが行われているかが重視されるポイントです。
評価レベルの考え方|★3〜★5で何が求められるのか
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、想定される脅威や求められる対策レベルに応じて評価レベルが段階的に設定されます。
既存のセキュリティアクション宣言制度を流用した「★1~★2」に加え、サプライチェーン全体への影響を見据えた新たな評価区分として「★3~★5」の導入が検討されています。
各レベルの考え方は、以下の通りです。
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評価観点 |
★3(Basic) |
★4(Standard) |
★5 |
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想定される脅威 |
一般的なサイバー攻撃(既知の脆弱性の悪用など) |
サプライチェーンに大きな影響を与える攻撃 |
未知の攻撃を含む高度なサイバー攻撃 |
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対策の考え方 |
基礎的なシステム防御と体制整備 |
ガバナンス・取引先管理を含む包括的対策 |
ベストプラクティスに基づく対策 |
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求められる達成水準 |
役割・責任の定義、初期侵入や拡大への対策 |
組織的対策と継続的改善の実施 |
サイバーレジリエンスの確立 |
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サプライチェーン視点 |
自社中心の対策 |
取引先を含む被害拡大防止 |
サプライチェーン全体の水準向上 |
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評価項目数 |
83項目 |
157項目 |
今後検討予定 |
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評価スキーム |
専門家確認付き自己評価 |
第三者評価 |
第三者評価 |
ポイントは、★3は自社単体の対策整備が中心ですが、★4以上では取引先やサプライチェーン全体を意識した対応が求められ、第三者による客観的な評価が前提となる点です。
近年のセキュリティ対策制度では、企業の自己申告や一時点の確認に依存せず、外部から観測可能な「外形情報」と、リスク状況を継続的に把握する「継続監視」を重視する傾向が強まっています。
出典:1.サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案)について|経済産業省
◆サプライチェーンのセキュリティ対策で多くの企業がつまずく課題(制度対応の“現実”)

サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度の検討が進む中、「制度の方向性は理解できるものの、現場でどう対応すべきかが見えない」という声は少なくありません。特に中小企業やIT専任部門を持たない企業では、日常のセキュリティ管理が十分に整理されておらず、制度対応が新たな“負荷”として積み上がってしまうケースも。
ここでは、サプライチェーンのセキュリティ対策への対応において、多くの企業が直面しやすい課題をご紹介します。
自社のIT資産を正確に把握できない
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、システムやネットワーク、クラウドサービスなどのIT資産を前提に評価が行われます。しかし現実には、利用中のシステムや外部委託先、シャドーITまで含めて正確に把握できていない企業も多く、評価以前の段階でつまずくケースが目立ちます。
資産の棚卸しが不十分なままでは、必要な対策レベルを判断できず、評価結果の信頼性も担保できません。
特にグローバル拠点や委託先を含めると、外部公開されているIT資産やデジタル露出を網羅的に把握することは困難です。棚卸しベースの管理では、更新漏れや把握漏れが常態化しやすくなってしまいます。
アンケート回答が“自己申告”で正確性に欠ける
サプライチェーンのセキュリティ対策において多くの企業が直面する課題の一つが、アンケート回答が自己申告に依存し、評価の正確性を担保しにくい点です。従来の書面ベースの評価では、担当者の理解度や解釈によって回答内容に差が生じやすく、実際の対策状況と評価結果が一致しないケースも見受けられます。
制度対応が求められる場面では、「回答上は対策済みだが、客観的な根拠を示せない」という状態に陥りやすく、取引先や監査対応で説明責任を果たすことが難しくなります。
評価結果に対して“どこから改善するか”の優先付けが難しい
サプライチェーンのセキュリティ対策では、評価結果が示されても、次に何を優先して改善すべきかを判断できない企業が少なくありません。アンケート型やチェックリスト型の評価は達成可否の把握にとどまり、リスクの大きさや事業への影響度まで整理されないケースが多いのが実情です。
その結果、限られたリソースの中で対策の優先順位を付けられず、改善が進まない状況が生じます。「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」に対応するには、評価取得を目的化せず、リスクに基づいた優先付けと継続的な改善につなげる視点が重要です。
経営層や取引先へ説明できるデータ形式になっていない
サプライチェーンのセキュリティ対策における課題として、「評価結果が社内外への説明に使えない」という悩みも多く寄せられています。経営層や取引先に対して、評価の妥当性や改善状況を定量的・継続的に説明できる形式になっていないため、制度対応の意義が共有されにくいのが実情です。
その結果、投資判断や取引判断の根拠として活用されず、説明責任を十分に果たせない状況が生じます。「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」への対応では、評価結果を客観的かつ比較可能なデータとして整理・可視化することが求められます。
こうした課題を解決するには、主観や自己申告に依らず、外部視点でセキュリティ状況を定量的に把握できる仕組みが有効です。
西部電気工業株式会社が提供する「Bitsight(ビットサイト)」は、インターネット上の外形情報をもとに、自社およびサプライチェーンのセキュリティリスクを継続的に測定・可視化し、A〜Fのスコアで評価するサービスです。単なるレポート出力にとどまらず、リスク要因の特定や改善状況の把握を通じて、セキュリティ水準の向上を支援します。評価制度そのものを代替するものではありませんが、「第三者からどのように見えているか」を定量的に示せるため、制度対応における説明資料や、現状把握の材料として活用しやすい点が特徴です。
また、評価制度で重視される「外形評価」や「継続評価」といった考え方とも合致しやすく、経営層や取引先への説明負荷を下げる一つの手段となり得ます。
制度対応に向けて、自社やサプライチェーンのセキュリティ状況を客観的に把握したいという方は、以下の現状評価レポートをご活用ください。
◆「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」対応における課題の解決策

「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」への対応では、従来の自己申告型管理だけでは限界があるため、外部視点での可視化と、継続的に示せる評価体制が求められます。ここでは、同制度対応における課題の解決策を、「外形リスクの可視化」と「継続評価」の視点から解説します。
外形リスクの可視化
制度対応における課題の解決策の一つが、外形リスクの可視化です。
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、企業の内部認識ではなく、第三者から見た「外側の姿」が重視されます。インターネット上に公開されている設定不備や脆弱性、証明書の状態、侵害兆候などを客観的に把握することで、棚卸しや自己申告に依存しない評価が可能になります。
外形情報(第三者視点のデータ)を用いることで、評価制度への対応状況を、取引先や監査に説明可能な形に変えることができます。
継続評価
制度対応で多くの企業が抱える課題への解決策として、評価を一過性で終わらせない継続評価を行うことも挙げられます。
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、対策の有無だけでなく、その維持・改善状況が問われるため、定期的に評価を行い、スコアや指標の推移を把握することで、リスクの変化や対策効果を定量的に示すことが可能です。
継続評価を取り入れることで、制度対応が突発的な負荷ではなく、日常のセキュリティ管理の延長として定着させやすくなるでしょう。
◆制度対応の課題解決に「外形リスクの可視化」と「継続評価」を実施するメリット

「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」への対応強化のために「外形リスクの可視化」と「継続評価」を取り入れることで、制度対応を“負荷”ではなく、実務に根付いたリスク管理へと転換できます。
ここでは、同評価制度対応の課題解決に「外形リスクの可視化」と「継続評価」を実施する5つのメリットをご紹介します。
自動でデジタル資産が把握できる(工数削減へ)
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」に対応する上で、まず課題となるのが自社のIT資産の把握です。外形リスクの可視化では、社内台帳や担当者へのヒアリングに頼るのではなく、インターネット上に公開されている情報をもとに、企業に紐づくデジタル資産を自動的に検出します。
これにより、人手による棚卸しでは把握しきれない検証環境や過去に構築されたサーバーなど、「外からは見えているものの、社内では把握されていない資産」も洗い出すことが可能です。人手や自己申告に依存しないため、把握漏れや更新遅れを防げるほか、グローバル拠点や委託先を含めた管理も現実的になり、制度対応に伴う工数削減にもつながります。
第三者が見ているのと同じ“外側の姿”がわかる
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、第三者評価や外部視点が前提となることから、外形リスクの評価は、攻撃者や取引先、監査者と同じ視点で自社を捉えることにつながります。
内部資料では見えない「外からどう見えているか」を把握できるため、制度対応における客観性と説得力が大きく向上するでしょう。
評価の推移(グラフ)が定量化される
継続評価を行うことで、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」におけるリスク状況の変化や改善の成果を、時系列で把握できる点もメリットです。
評価結果がグラフなどで定量化されるため、単なる現状把握にとどまらず、経営層や取引先への説明資料としても活用しやすくなります。評価を「一度きり」にしないことで、制度対応の信頼性を高められます。
改善ポイントが明確に提示される
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、評価結果を次のアクションにつなげられるかが重要視されています。外形リスクに基づく評価では、外部から観測されたリスク事象が資産単位で可視化されるため、抽象的な指摘にとどまらず、「どの資産に、どのようなリスクがあるのか」を具体的に把握することが可能です。
その結果、自社の事業影響や対応リソースを踏まえながら、「どこから対応すべきか」を判断しやすい状態を作れます。
これにより、評価結果を実務に落とし込み、制度対応を具体的な改善行動へと移しやすくなります。
調達・サプライチェーン評価にも転用できる
「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」という統一された評価手法を用いることで、自社だけでなく取引先や委託先のリスク評価にも転用できます。
評価基準を共通化できるため、調達・サプライチェーン全体を横断したリスク管理が可能となり、個別に確認・説明を行う負荷も大きく軽減されることも利点といえるでしょう。
◆「Bitsight × 西部電気工業」でセキュリティ対策評価制度への対応を省力化しよう

引用:サイバーリスク可視化サービス BITSIGHT/ビットサイト|大企業向け情報セキュリティ | 西部電気工業ソリューション
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度への対応にあたり、「できるだけ手間や工数をかけずに、客観的な評価を示したい」と感じている企業も多いでしょう。
「Bitsight(ビットサイト)」は、インターネット上の外形情報のみを用いて企業のセキュリティリスクを継続的に評価するサービスです。
サーバーやネットワーク機器などのデジタル資産を自動検出し、証明書・ポート・脆弱性・漏えい認証情報といった評価制度に近い項目を、スコア化(300~820点)できます。
また、推移グラフを活用することで、改善状況も説明しやすくなります。自社だけでなく、グループ会社、サプライチェーン、サードパーティのセキュリティリスクも評価することが可能です。
西部電気工業では、Bitsightの導入や改善助言、定例レビューまで伴走し、制度対応をワンストップで支援いたします。
セキュリティ対策評価制度対応の負荷を抑えつつ、自社やサプライチェーンの現状を把握したい方は、西部電気工業が提供するセキュリティ可視化(Bitsight等)のデモをご活用ください。
また、サイバーリスクを“点数”で把握する最新手法を知りたい方は、以下の資料をぜひダウンロードしてご確認ください。
【危険度が点数でまるわかり】最先端のサイバーリスク可視化ツールとは?
◆まとめ:制度対応は“評価される側”から“評価を設計する側”へ
経済産業省および内閣官房国家サイバー統括室による「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、2026年末の導入に向けて検討が進められており、今後は取引・調達・監査の場面で参照される機会が増えると見込まれます。
これからのセキュリティ対策では、「対策の有無」だけでなく、「第三者からどう評価されているか」が重要です。企業に求められるのは、受け身の姿勢で評価を受けるのではなく、外形リスクの可視化と継続的なモニタリングを通じて、評価や改善の示し方を自ら設計していく姿勢です。
西部電気工業では、Bitsight等の導入から運用・改善までをワンストップで支援し、企業の制度対応とセキュリティ強化をトータルでサポートいたします。
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度への対応や、自社の評価の示し方に課題を感じている方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
更新日:2026.03.10
