クラウドERP『Microsoft Dynamics 365 Business Central』を導入して基幹システムと業務プロセスをリプレース。新たな基幹システムとともに、積極的な海外展開を視野に入れていきたいと考えています
三木プーリ株式会社様
積極的に海外展開などを行っていくうえで足枷となっていた基幹システムをリプレースするため、三木プーリは西部電気工業をベンダーに据え、Microsoft Dynamics 365 Business Centralにてリプレースを行いました。その背景や現在の稼働状況などについて、情報システム部 部長 木村氏、同部 主査 井上氏、同部 野尻氏にお話を伺いました。
- 業種製造業(伝動制御機器の開発・製造・販売)
- 従業員数約914名(連結)
- 導入前の課題・基幹システムのレガシー化:オフコンベースで20年以上稼働、最新技術への対応不可
・業務の属人化:部門任せ・担当者任せで標準化が困難
・紙の指示書によるボトルネック:販売管理・生産指示・出荷指示が紙ベースで管理が煩雑 - 導入理由・海外展開を見据えた基幹システム刷新
・業務効率化と生産性向上のため、業務プロセスも標準化
・Microsoft製品との親和性とFit to Standard提案による短納期対応 - 特筆する効果・スマホアプリ導入で物流・在庫管理をリアルタイム化
・Dynamics 365 Salesで営業プロセスを刷新し、案件情報を一元管理
・Microsoft 365連携で余計なツール不要、業務効率化を実現
■会社概要

■三木プーリ株式会社
■本社所在地:神奈川県川崎市中原区今井南町10-41
■創業:1939年10月
■従業員数: 914名(連結)
■事業内容:伝動制御機器の開発・製造・販売
- 目次 -
さまざまな伝動制御機器を開発・製造・販売
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三木プーリの会社概要をお聞かせいただけますか。
1939年10月、三木製作所として創業した当社は、1954年10月にベルト式無段変速機である「三木プーリ無段変速機」の製造・販売を開始し、日本の技術革新と産業発展に大きく貢献しました。そのときの製品名にあやかり、1966年10月に誕生したのが三木プーリ株式会社です。現在、本社とヘッドクオーターに加えて5つの支店、さらに国内5つのグループ会社、海外11のグループ会社を束ね、事業は大きく成長しています。
当社の主力製品となっているのは伝動制御機器です。伝動制御機器には、モーターなどからの回転運動をベルトで他の部品へと動力を伝達するプーリほか、モーターと減速機をつなぐカップリング、モーターを止めるためのブレーキ、動力をつなぐためのクラッチ、変速させるための変速機などがあり、当社はそれらを開発・製造・販売しています。販売先となるお客様は食品メーカーや工作機械メーカー、半導体装置メーカー、織機メーカーなどです。基本的にはお客様の要望に合わせて仕様を決めていく多品種小ロット生産で、その生産品目は200万にもおよびます。
現在のところは国内向けが中心ですが、近年は中国やインドなど海外グループ会社の稼働が活発化しているため、今後は海外向けにも注力していくつもりです。お客様のお役に立つ革新的なものづくりを通じ、社会・産業界へ貢献していきたいと考えております。
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20年以上使い続けてきたオフコンの基幹システムをリプレース
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基幹システムのリプレースの背景および課題をお聞かせいただけますか。
導入から20年以上が経過し、オフコンベースの基幹システムがレガシー化していたため、最新技術を取り入れたシステムへの移行が求められていました。冒頭で申し上げた海外展開に加え、今後はお客様の要望に合わせたカスタマイズ製品だけでなく、自社製品の開発に注力していきたいという想いがありましたが、当時の生産体制はそのためのリソースや時間をつくる余裕がありませんでした。リソースと時間を確保するには、業務効率化が必須です。そのためには、業務効率化と生産性向上の足枷になっている基幹システムのリプレースが必要と考えるようになりました。
また、基幹システムには課題が3つありました。
<①システムのブラックボックス化>
オペレーションがコマンド主体ということで、業務が一目で分かる状況ではありませんでした。また、意思決定するための情報を出力する場合も非常に時間がかかっていたため、経営陣は長年に渡って危惧していました。
<②業務の属人化>
前述のブラックボックス化した環境でのオペレーションでしたから、運用において全社的なルール適用が難しく、どうしても部門任せ・担当者任せになってしまい、結果的に属人化の傾向が強くなっていました。
<③紙の指示書によるボトルネック>
販売管理からの生産指示および購買・外注指示、在庫管理からの出荷指示などは、紙で出力した指示書をもとにそれぞれの部門が業務を行っていました。指示書はホワイトボードなどにまとめて貼っていましたが、どうしても管理が煩雑になりがちで、業務に影響しているのではないかという懸念がありました。実際、設備投資を行ってキャパシティを増やしても、思ったほどの生産性向上が得られなかったこともあり、紙ベースの指示書が根本的なボトルネックになっているという仮説を立てざるを得ませんでした。

情報システム部 部長 木村氏
仕事のやり方もリプレースしながら重要テーマに取り組む
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新たな基幹システムに求めた要件を教えていただけますか。
RFPで掲げた要件(リプレースに向けた重点テーマ)は以下の3つです。
<①営業プロセスの刷新/バリューセールスプロセス構築>
見積・受注にかかる営業工数を削減し、顧客接点活動・営業戦略・新規開拓などの営業活動時間を捻出する
<②調達購買プロセスのスリム化/サプライチェーンマネジメント最適化>
発注、計画、納期管理にかかる工数を削減し、需要増への柔軟な対応、在庫最適化、サプライヤマネジメントなど、購買戦力に注力する
<③物流プロセスの効率化/スマートロジスティクス実現>
製品在庫管理・出荷業務の工数を削減し、出荷増への対応、物流コスト削減(LT短縮に向けた保管場所検討など)への取組みを強化する
これらを実現できる基幹システムを求めると同時に、我々も仕事のやり方を見直す必要があると考えました。すなわち、新たな基幹システムに合わせ、業務プロセスもリプレースしていく取り組みです。そういう意味では、これまでの業務プロセスに固執しない基幹システムというのも要件のひとつでした。

情報システム部 主査 井上氏
業務プロセスのリプレースを期待できるFit to Standardでの提案
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ベンダーの比較・検討はされましたか。また、西部電気工業を選んだ理由をお聞かせいただけますか。
取引のあるベンダーなど3社から提案をいただき、比較・検討しました。どのベンダーの製品も3つの要件はクリアしていましたが、業務プロセスもリプレースできると感じたのは、西部電気工業がFit to Standardの方針で提案されたMicrosoft Dynamics 365 Business Central(以下、D365BC)です。デファクトスタンダードといえるMicrosoft製品に合わせていけば、業務プロセスのリプレースにつながるのではないかと考えた次第です。ほか、以下の点も高く評価し、西部電気工業を選定させていただきました。
<Microsoft製品との親和性>
長く使い続けているWordやExcelといったアプリケーションのほか、グループウェアにおいてもMicrosoft 365を近々に導入する予定でした。そういった環境を考えると、余計なツールを利用することなく、スムーズに連携できるMicrosoft製品のD365BCは好相性なのは間違いありません。選定の大きなポイントになりました。
<西部電気工業の豊富な実績と知見>
西部電気工業はD365BCの構築に豊富な実績と知見があると伺いました。また、構築のフェーズやサポートも具体的に提示していただいたことで、安心して任せられると感じました。
<短納期に対応できる>
当社が求めた納期に対応できると回答いただいたのが西部電気工業でした。ベンダー選定当初は、財務管理において既存の会計システムとD365BCを連携させることを想定していました。しかし、当社の要望により、導入作業の途中で会計業務もD365BCで行う方針へと変更したため、スケジュール調整が必要になりましたが、再調整を含めたスケジュールへの対応力は素晴らしいと感じました。
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導入プロセスと西部電気工業の対応についてお聞かせいただけますか。
2022年初頭から要件定義がスタートしました。その後、先ほど申し上げた会計システムとの連携といった開発範囲の拡大がありましたが、2024年初頭には本稼働しています。プロジェクト進行中は定例会を通じ、進捗状況とスケジュール確認、課題などを共有しながら推進。おかげさまで、大きなトラブルなどはなく、粛々と導入を進めることができました。ただ、海外製品のためか、マニュアル類の不足を感じるところがありました。マスタ一覧もなかったため、西部電気工業に依頼し作成していただきました。マスタに限らず、マニュアル不足を補う西部電気工業の分かりやすい説明と資料提供には感謝しています。

情報システム部 野尻氏
これまでの運用スタイルから脱却し、業務効率化と生産性向上を求めていく
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本稼働後の運用状況はいかがでしょうか。
基幹システムそのものは安定稼働しています。ただし、20年以上利用していた基幹システムから機能も操作性も仕組みも一新されているため、使いこなすにはもう少し時間がかかりそうです。業務効率化と生産性向上を求めていく運用は、これから本腰を入れていく状況です。
また、こうした状況を踏まえ、現場の課題をボトムアップで洗い出し、その課題を経営層が精査してトップダウンで改善していく「あるべき姿の運用に向けた取り組み」がスタートする予定です。その際には、運用改善とともにシステム面の改修も出てくる可能性があるため、引き続き西部電気工業の支援に期待しています。
物流・営業部門に導入した新たな仕組みに期待
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現在の導入効果や今後に期待していることがあればお聞かせいただけますか。
D365BC はWindows環境の画面と操作性ですから、使い勝手面での違和感はありません。Windowsアプリケーションを利用する社内業務との統一感も図れたと感じています。また、前述した選定理由の通り、WordやExcel、Microsoft 365とスムーズに連携できるため、データのやり取りに余計なツールを利用する必要がありません。その点においては、業務効率化も実現できています。
ほか、以下の点については効果や期待を感じています。
<モバイルアプリで生産・物流現場が効率化>
要件で挙げた「③物流プロセスの効率化/スマートロジスティクス実現」に近づく仕組みとして、生産と物流の現場における出荷指示(ピッキング)、生産指示、受入指示、出荷指示(梱包)、在庫管理などがスマートフォンのアプリで行えるようになりました。このアプリは基幹システムとは別に、Microsoft Power Platformを用いて開発していただきました(グループ会社のサン・プラニング・システムズが担当)。
今までこうした物流の管理は共有のPCで行っていたため、操作する場合はPCが設置されている場所まで行く必要がありました。しかも、先客がいるときは待機しなければなりませんでした。現在はわざわざ移動する必要はなく、個々で所有するスマートフォンからリアルタイムに操作できますから、かなり効率化が促進されました。また、このアプリ利用と同時に、生産実績によって在庫が引かれるバックフラッシュから、ピッキングするときに在庫を落とすフォワードスケジューリングに変更しました。これにより、生産管理の精度も高まっています。
<Microsoft Dynamics 365 Salesによる営業プロセスの刷新>
要件で挙げた「①営業プロセスの刷新/バリューセールスプロセス構築」については、基幹システムとは別に、Microsoft Dynamics 365 Sales(以下、D365 Sales)で新たなCRM(Customer Relationship Management)を構築していただきました。以前は案件に指示書や依頼書などが紐づいておらず、営業活動を行う際は顧客や案件に応じてその都度、関連する資料を探す手間が発生していました。そこで案件を起点に、案件に関わっている部門の活動状況が一元的に分かる仕組みを構築したいと考え、D365 SalesによるCRMを西部電気工業に依頼した次第です。
CRMのシステムは完成していましたが、ようやく仕組みづくりにも目途がつき、本稼働できる状況になってきました。今後の期待にはなりますが、このCRMを顧客接点活動・営業戦略・新規開拓などに役立てることができればと考えています。
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今後の展開と西部電気工業に対する期待をお願いします。
基幹システムの運用における課題は、当社だけでは解決できないところも出てくるかと思いますので、システムの改修や提案といったところで引き続きご協力をお願いします。また、意思決定のスピードを上げるためには、BIツールの活用も必要になります。具体的には、Microsoft Power BIでのデータ分析を考えていますが、使いこなすには西部電気工業のサポートが欠かせません。これからも当社と西部電気工業の二人三脚体制で推進していければ幸いです。

(左より)
三木プーリ株式会社 情報システム部 野尻氏
三木プーリ株式会社 情報システム部 主査 井上氏
三木プーリ株式会社 情報システム部 部長 木村氏
西部電気工業株式会社 ソリューション事業本部 河本 凌一
西部電気工業株式会社 ソリューション事業本部 百武 淳二
お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
* 取材日時 2025年9月
* 三木プーリ様のサイト
* 記載の所属、役職名等は、2025年9月時点のものを記載しています。

