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【最新版】SaaS型ERP製品の導入で押さえておきたい「Fit to Standard」と「Fit&Gap」とは?

企業の基幹業務を支えるERPパッケージは、データの一元管理や業務プロセスの統合を実現し、スクラッチ開発よりも低コスト・短期間で導入できることから近年多くの企業で採用が進んでいます。

しかし、ERPをどう導入するかは企業によっても最適解が異なります。そこで役立つのが、標準機能に業務を寄せて導入する「Fit to Standard」という考え方や、自社要件との差分を分析する「Fit&Gap」とよばれる手法です。

本記事では、Fit to Standard と Fit&Gapをわかりやすく解説するとともに、標準機能とローコード開発を組み合わせて柔軟に拡張できる SaaS型ERP製品「Dynamics 365 Business Central」 の特徴についてもご紹介します。

Fit to Standard とは?メリット・デメリットを徹底解説


はじめに、Fit to Standard とはどういった考え方なのかを解説します。

Fit to Standard とは


Fit to Standard は「システムの標準機能を前提に業務を最適化する」考え方です。

業務内容や業務プロセスをシステム側に合わせるため、システム側のカスタマイズを最小限に抑えられるのが大きな特徴として挙げられます。

Fit to Standard のメリット


Fit to Standard を採用する最大のメリットは、短期間かつ低コストで導入できることです。

■導入期間を短縮できる

システムの標準機能を前提とするため、追加開発や複雑な検証工程が少なく、導入期間を短縮できます。

■コストを最小限にできる

アドオンの開発はもちろんのこと、大規模なカスタマイズも最小限に抑えられるため、開発費用や工数を削減できます。

■運用負荷を軽減できる

標準機能ではベンダー側からアップデートや保守が提供されるため、導入後の管理・改修にかかる負担が小さくなります。

導入後のシステム運用をシンプルに保てる点も大きな利点といえるでしょう。

Fit to Standard のデメリット


Fit to Standard では業務を標準機能に合わせる必要があるため、現場側に一定の負担が発生する点は注意が必要です。

■業務フローの変更が必要になるケースがある

現行の業務プロセスや業務フローがシステムの標準機能と大きく異なる場合、業務手順そのものの見直しが必要になることもあります。

その結果、業務プロセスの最適化が完了するまで時間がかかり、一時的な生産性低下などの課題が発生するおそれもあるでしょう。

■一部の要件を満たせない可能性がある

標準機能を超える業務ニーズがある場合、Fit to Standard だけでは対応しきれないこともあります。

業務によってはシステムに合わせることが難しい場合もあるため、自社の業務内容との適合性を慎重に見極める必要があるでしょう。

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Fit&Gapとは?メリット・デメリットを徹底解説


Fit&Gapとは?メリット・デメリットを徹底解説

Fit & Gapとは、システムの標準機能(Fit)と自社の現行業務や要件との差分(Gap)を整理し、必要に応じて機能を補ったり業務プロセスを見直したりする手法です。

標準機能だけでは対応しきれない業務がある場合に、独自の運用や競争力を維持しながら導入を進められる点が特徴です。

Fit&Gapの特徴


Fit&Gapの目的は、標準機能で対応できる範囲と追加対応が必要な範囲を明確にし、自社に最適なシステム構成を判断することです。

Fit to Standard とは異なり、業務プロセスをシステムに合わせつつ、システムがカバーできない部分はカスタマイズやアドオン開発で補う点が大きな特徴です。

そのため、開発のボリュームが大きいほど労力は増え、導入期間が長くなりがちです。

Fit&Gapのメリット


Fit&Gapによる業務整理の最大のメリットは、既存の業務フローや業務プロセスを維持できる点にあります。

独自業務を反映しやすい

自社が独自に開発したシステムとの連携など、標準機能では対応できない業務も少なくありません。Fit&Gap分析によりGapを特定することで、業務を標準機能に合わせるか、最小限のカスタマイズで既存の強みを残すかを判断できます。

現場にとって無理のない運用設計が可能

システムに合わせて無理に現行業務を変えようとすると、現場スタッフへの再教育が不可欠になり、現場負荷の増大にもつながります。

Fit&Gap分析によって現行業務との乖離を把握することで、その結果に基づき必要最小限の変更にとどめることができ、導入後の現場の負荷を軽減できます。

カスタマイズやアドオン開発に伴うデメリット


現行業務とシステムとの差分を埋めるためにカスタマイズやアドオンの開発を行った結果、以下のようなデメリットが生じる懸念もあります。

導入期間が長期化しやすい

追加機能の設計・開発・テストが必要になるため、標準機能中心のFit to Standardに比べると導入期間が長期化する傾向があります。

コストが増加しやすい

追加対応が増えるほど、外部ベンダーや社内メンバーの工数が膨らみ、結果として予算が増える可能性があります。

将来的な運用負担が重くなるおそれ

現行業務に合わせてさまざま機能を組み込んでしまうと、システムの仕様が複雑化しすぎてしまい、保守・メンテナンスを含めた運用の負担が重くなるリスクもあります。

Fit to StandardとFit&Gapの特徴をおさらい


ここまで紹介した内容をもとに、Fit to StandardとFit&Gapの特徴をそれぞれまとめました。

 

Fit to Standard

Fit & Gap

特徴

システムに備わっている標準機能をフルに活用し、必要に応じて複数のクラウドサービスと組み合わせて導入する方法 

業務をシステムの標準機能に合わせる

システムの標準機能と企業の現在の業務プロセス・要件との過不足分を洗い出す方法 

不足部分のみを追加開発で補い、現行業務と標準機能のギャップを最小化する

導入期間

最短数ヵ月の短期間で導入可能

カスタマイズ・アドオン開発が必要な場合、年単位の導入期間になる可能性も

導入コスト

Fit & Gapに比べて抑えられる

Fit to Standardに比べてコストがかさみやすい

Fit to StandardとFit&Gapは対立する考え方ではなく、特にERPの導入時には両者をうまく組み合わせて検討することが重要です。

Fit to Standardは導入期間やコストの面でメリットが大きいですが、現行の業務プロセスや業務フローによっては大きな変更を強いられ、現場の負担が増大するリスクもあるでしょう。

そこで、Fit&Gapの手法に基づき標準機能では対応しきれない業務を抽出し、アドオンで開発すべき機能やシステムを慎重に見極めることが重要です。

ERPの導入方法を誤ると何が起きるのか?よくある失敗とリスク


ERPの導入方法を誤ると何が起きるのか?よくある失敗とリスク

ERPの導入にあたっては、どのような考え方で業務とシステムをすり合わせるかによってプロジェクトの成果が大きく変わります。導入方式の判断を誤ってしまうと運用現場やシステム側にさまざまな負荷が生じ、期待していた効果が得られないケースも少なくありません。そこで、多くの企業が直面しやすい代表的な失敗とリスクを整理します。

現行業務をそのまま再現しようとすると、システム側に多くの追加機能を作り込む必要があります。

こうした過剰な作り込みが続くと、バージョンアップのたびに改修作業が必要になったり、システムの仕様を特定の担当者しか理解していない、テストや検証に時間がかかるなどの問題が生じる可能性もあります。

その結果、運用フェーズで大きな負担がかかり、システムの改修や機能追加の妨げにつながるでしょう。

標準機能に無理に合わせて、現場に負担がかかる


システムの標準機能に業務を寄せすぎると、現場が本来の業務フローとかけ離れた運用を強いられるケースがあります。

その結果、入力作業が増えて日常業務が圧迫されたり、操作が複雑で使いこなすまでに時間がかかるなど、定着が進まない状況が生まれがちです。

こうした負荷が積み重なると、システムを十分に活用できず、Excelや手作業に戻ってしまうこともあります。

本来の目的であった業務効率化が実現しないまま、現場の負担だけが増えてしまうおそれがあるのです。

導入期間が伸び、コストが膨らむ


業務とシステムの擦り合わせが十分でない状態で導入を進めると、後から追加の対応が必要になり、当初のスケジュールにズレが生じることがあります。

想定していなかった機能追加が発生したり、テスト工程が増えたりすることで、プロジェクト全体の負担が大きくなる点も注意が必要です。

このような状況が続くと、導入期間が延びるだけでなく、担当者の稼働や外部ベンダーへの依頼が増え、結果としてコストが膨らむおそれもあります。

ERP導入にあたり押さえておきたいポイント


ERP導入にあたり押さえておきたいポイント

ERP導入において重要なのは、「Fit to Standard」と「Fit&Gap」のどちらか一方を選ぶことではありません。両者をどのように捉え、どの観点で使い分け・組み合わせていくべきかを整理します。

Fit&Gapで独自業務を整理・可視化


現行業務とERPの標準機能を比較することで、どの業務を標準に合わせるべきか、またFit to Standardをどこまで徹底できるかが見えてきます。

そのための手法としてFit&Gapは有効であり、独自業務を洗い出し、整理・可視化するためのプロセスとして捉えるとよいでしょう。

たとえば、業務の棚卸しを行う中で、不要な独自プロセスや属人化した業務を見直した結果、結果的にFit to Standardに近づけられるケースも少なくありません。

社内でのシステム内製化を踏まえて導入方針を考える


Fit to Standardをどこまで実現できるかは、社内でのシステムの内製化や運用体制にも大きく左右されます。

エンジニアが多く在籍し、システム改修や運用を内製で担える体制が整っている企業では、Fit&Gapによって業務と標準機能の差分を整理したうえで、必要最小限の対応を行うという選択肢も現実的です。

ただし、その場合でも標準機能を前提としたFit to Standardの考え方を基本に据えることが長期的な運用負荷の抑制につながります。

一方、IT部門の規模が小さい企業や、システム運用に十分なリソースを割けない企業では、Fit to Standardをより重視し追加開発や個別対応を極力増やさない導入方針が現実的といえるでしょう。

標準機能を活かした運用とすることで、保守・アップデートの負担を抑えやすくなり、将来的なシステム刷新やバージョンアップにも柔軟に対応できます。

Dynamics 365 Business Central が注目される理由


中小企業向けのERPソフト 『Microsoft Dynamics 365 Business Central 』とは?

ERP製品はさまざまなベンダーから提供されていますが、その中でも「Dynamics 365 Business Central(以下、Dynamics 365)」は、中小企業を中心に導入が進んでいるSaaS型ERPです。標準機能の充実度に加え、Microsoft製品ならではの拡張性や連携性の高さが魅力。MicrosoftではFit to Standardで足りない部分(Gap)をローコード開発のPower Platformと組み合わせてカスタマイズする導入方法を推奨しています。

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中小〜中堅企業に適したSaaS ERP


Dynamics 365は、財務会計・販売管理・購買管理・在庫管理・プロジェクト管理など、企業運営に必要な機能が一通り標準機能として揃っています。自前のサーバーを用意せずにクラウド上で利用できるSaaS型であるため、初期コストや運用負担を抑えながら導入できる点も大きな特徴です。

中小企業では基幹システムの大規模なカスタマイズや専任のIT部門の設置が難しいケースも少なくありません。Dynamics 365は標準機能の範囲が広く、シンプルな構成で運用しやすいため、企業規模に関わらず導入しやすい製品といえるでしょう。

標準機能+Power Platformで柔軟に拡張できる強み


Dynamics 365の大きな強みは、標準機能だけでなく「Microsoft Power Platform」と組み合わせることで、業務に合わせた拡張や自動化が簡単に実現できる点です。

Power Platformには、アプリ開発・ワークフロー自動化・データ分析などをノーコード/ローコードで行えるツール群が揃っており、以下のような活用が可能です。

■Power BI(分析)

Power BIはさまざまなデータソースと接続し、データの統合や可視化を直感的に行える分析ツールです。

Excelに近い使い心地でありながら、高度なダッシュボードや分析レポートも作成でき、多様なデータからインサイトを得ることができます。

■Power Apps(業務アプリの構築)

Power Appsは、プログラミングを行わずに独自の業務アプリを作成できるローコードツールです。

現場で必要とされる入力フォームやチェックリスト、モバイルアプリなどを短期間で構築できるため、業務改善や現場の効率化に役立ちます。

■Power Automate(自動化)

Power Automateは、コード不要でワークフローの自動化を行えるツールです。

メール通知、承認フロー、データ転記の自動化など、日々の作業を効率化し、担当者の作業時間を大幅に削減。さらにシステム連携にも強く、Business Centralのイベントをトリガーにした自動処理なども簡単に実現できます。

■Copilot Studio(会話型AI)

Copilot Studio は、ノーコードで会話型AIチャットボットを作成できるツールです。

顧客や従業員から寄せられる日常的な問い合わせへの一次対応を自動化できるほか、Business Central や Microsoft 365 と連携させることで、在庫確認や顧客データの照会など、幅広い業務を効率化できます。

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これらのツールの活用により、Fit to Standardを基本としつつ、必要な部分だけ柔軟に補うハイブリッドな導入が可能になります。標準機能を損なわずに業務効率化を進められるため、追加開発によるシステムの複雑化を避けたい企業にとっても大きなメリットがあります。

Microsoft 365との高い親和性


Dynamics 365は、Microsoft 365との高い親和性を持つことも大きな魅力です。

たとえば、Outlookのメール画面から見積書・請求書を作成したり、OneDriveに保存されたファイルをDynamics 365で参照することも可能。これまで日常的に利用してきたビジネスツールとスムーズに連携できれば、業務効率をさらに高められるでしょう。

また、現場のスタッフが日常的に使い慣れた環境やツールをそのまま活用できるため、導入後の教育コストが抑えられ現場への定着もスムーズに進みます。

自社に最適なERPを導入するために


今回は、ERP導入で重要なFit to Standard と Fit&Gapの考え方について解説しました。

ERP導入では、Fit to Standard と Fit&Gap を正しく使い分け、自社の業務と将来像に合ったアプローチを選ぶことが重要です。こうした取り組みが、導入後のスムーズな運用と長期的な発展につながるでしょう。​‌

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更新日:2026.02.03