【最新版】中小企業のERP導入|押さえておきたい製品選定のポイント
近年、中小企業においてもERP(Enterprise Resource Planning)の導入が急速に進んでいます。しかし、市場には多種多様な製品が提供されており、自社に最適なERPをどのように選定すれば良いか悩んでいる企業担当者も少なくないでしょう。本コラムでは、中小企業がERPを導入する際に、製品選定で押さえておくべき重要なポイントを解説します。
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- 目次 -
◆なぜ、中小企業にもERPが必要なのか?
日本では労働人口の減少が年々進み、特に中小企業における人手不足は深刻な経営課題となっています。
限られた人員で多様な業務をこなすためには、「機械に任せられる業務はシステムに任せる」という発想が不可欠です。
また、いわゆる「ビッグデータ時代」に突入し、企業が扱うデータ量は指数関数的に増加しています。部門ごとにバラバラに管理されていたデータを統合し、リアルタイムで経営判断に活用できる仕組みとして注目されているのが「ERP(Enterprise Resource Planning)」です。
従来、ERPの導入は主に大企業が中心でした。
SAPやOracleなどのシステムは高機能である一方、導入・運用コストが高く、中小企業には手が届きにくいものでした。
しかし近年では、クラウド型ERPの普及により状況が一変。初期費用を抑えながら導入できる環境が整い、中小企業でも実現可能なERPの導入が急速に広がっています。
特に「Microsoft Dynamics 365 Business Central」のように、中小企業の業務規模や予算に最適化されたERP製品も登場し、導入のハードルは大きく下がりました。
これらのクラウドERPは、短期間での立ち上げや運用負荷の軽減にも優れており、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の第一歩として最適です。
このような背景を踏まえると、労働力不足・データ量の増加・クラウド化による導入コストの低下という3つの要因が重なったことで、ERPは「大企業だけのもの」ではなく、中小企業が限られた人員で生産性を高め、競争力を維持・強化するための必須基盤へと変わりつつあります。
◆中小企業がERPを導入する前にやるべきこと

ERPを導入する前に最も重要なのは、「製品選び」ではなく、自社の課題整理と方針決定です。
中小企業におけるERP導入を成功させるには、この準備段階の精度がすべてを左右します。
自社で抱える課題の整理
まず取り組むべきは、「自社のどんな課題をERPで解決したいのか」を明確にすることです。
課題が曖昧なままでは、最適な製品を選定することはできません。
中小企業でよく見られる課題には以下のようなものがあります。
- ・システム間のデータ連携ができておらず、情報が分断されている
- ・二重入力や転記作業など、非効率な手作業が多い
- ・経営指標をリアルタイムに可視化できない
- ・システムが増えすぎて管理コストが増大している
- ・内部統制やガバナンスを強化するために統一的な基盤が必要
これらの課題を「現状」「理想」「優先度」に分けて整理し、導入目的を明確にしましょう。
たとえば「販売管理と会計データを統合して意思決定を迅速化したい」など、具体的な目標を設定することで、ERP導入のROI(投資対効果)も測定しやすくなります。
導入方針の決定
課題が整理できたら、次は導入方針を定めます。
以下の3つの要素を明確にすることで、スムーズなERP導入プロジェクトが実現します。
- スケジュールの策定
導入完了時期や稼働開始目標を設定します。
あいまいなスケジュールは遅延の原因になるため、「来期決算期までに財務モジュールを稼働させる」など具体的に設定しましょう。 - ゴールの設定(KPI定義)
「経費処理時間を30%削減」「月次決算を2営業日短縮」など、定量的な目標を設定し、効果測定を行える状態をつくります。 - プロジェクト担当者の任命
導入の中心となる責任者を明確にし、社内外の調整役を担わせます。
ERP導入は全社的なプロジェクトとなるため、経営層の意思決定と現場担当者の連携が欠かせません。
これらを文書化した「ERP導入基本方針書」を作成しておくと、ベンダーとの打ち合わせや提案依頼(RFP)の段階でもスムーズです。
◆中小企業に適したERPの選び方

導入方針が固まったら、いよいよ要件定義と製品選定に移ります。
このステップでは、自社の規模・業態・業務内容に合ったERPを選ぶことが最重要です。
自社の規模や業態に合っているか
中小企業におけるERP導入では、まず「自社の業態・規模とマッチするか」を確認します。
大企業向けのERPは機能が豊富でも、中小企業にはオーバースペックとなり、コストや運用負荷が大きくなることがあります。
- ・製造業:生産計画・在庫管理・品質管理機能が充実しているか
- ・小売業:販売・在庫・会計データが統合されているか
- ・プロジェクト型企業:進捗・原価・請求を一元管理できるか
自社と同業種・同規模の導入事例があるかも重要なチェックポイントです。
これは、そのERPがどのような企業をターゲットに設計されているかを見極める手がかりになります。
自社に必要な機能は備わっているか
ERPは「何でもできる」システムではなく、必要な機能を必要な範囲で導入することが原則です。
機能が多すぎるとコストが増加し、運用も複雑になります。
代表的な機能は以下の通りです。
- ・生産管理機能(製造業向け)
- ・販売管理機能(受発注・請求・在庫)
- ・会計管理機能(財務・管理会計)
- ・プロジェクト管理機能(進捗・コスト・採算)
- ・製造管理機能(工程・設備・品質)
自社にとって本当に必要な機能を明確にし、スモールスタートで段階的に拡張できる製品を選ぶのが理想です。
将来的な業務拡大を見据えて、カスタマイズやAPI連携の柔軟性も確認しておきましょう。
クラウド型か、オンプレミス型か
ERPには、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つの提供形態があります。
中小企業におけるERP導入では、クラウド型の採用が主流です。
|
導入コスト |
低い(初期費用が少ない) |
高い(サーバー構築が必要) |
|
導入スピード |
数カ月~1年 |
半年~数年 |
|
カスタマイズ性 |
制限あり(標準仕様中心) |
高い(業務特化型対応可能) |
|
導入に適している企業 |
小〜中規模、スピード重視 |
特殊業務を抱える企業 |
クラウドERPは、初期投資を抑えつつ短期間で導入できるため、リソースの限られた中小企業に最適です。
一方、業務要件が複雑な場合や高度なカスタマイズが必要な場合は、オンプレミス型やハイブリッド構成も検討に値します。
使いやすさとサポート体制を重視する
ERPの導入後に実際に操作するのは、現場の従業員です。
そのため、操作性・定着率・サポート体制は選定時の最重要ポイントです。
- ・デモンストレーションを通じて、直感的に操作できるか確認する
- ・初期導入だけでなく、運用フェーズのサポート体制を確認する
- ・ベンダーやユーザーコミュニティの情報発信が活発かをチェックする
加えて、コミュニティが活発なERPは、専門家の助言やアイデアを参考にすることができるので、導入後の課題解決や機能活用の幅を広げる上でも大きなメリットがあります。
また、トレーニング資料やナレッジ共有が充実している製品を選ぶことで、導入後の教育コストを抑えられます。
◆【従業員規模別】中小企業がERP導入時に意識すべきポイント

一口に「中小企業」といっても、従業員規模によって抱える課題や導入時の留意点は大きく異なります。ここでは、企業規模別に見たERP導入のポイントを解説します。
従業員100名未満の企業 ― スピードと柔軟性を重視したERP導入を
従業員が100名未満の中小企業は、創業から成長の過程にある場合が多く、限られたリソースをコア事業へ集中投資する傾向があります。そのため、業務の属人化や情報の分散、データ共有の遅れといった課題が表面化しやすいのが特徴です。
この規模の中小企業におけるERP導入においては、まず自社に散在するデータを整理・一元管理できる仕組みを整えることが目的となります。
ただし、「とにかく全てのデータをまとめたい」と目的を曖昧にしてしまうと、かえって運用が複雑化したり、現場の負担が増したりします。
そのため、「どの業務データを、どのような目的で管理したいのか」を明確に定義することが重要です。
スタートアップやベンチャー企業では、環境変化が速く、意思決定のスピードも重視されます。初期費用を抑えつつ迅速に導入可能なクラウドERPを採用することで、柔軟に事業拡大へ対応できる基盤を整備できます。
従業員100~300名の企業 ― 全社的なデータ統合と標準化を推進
この規模の中小企業では、財務・販売・勤怠・在庫など、各部門がそれぞれ異なるシステムを導入しているケースが多く見られます。部門単位では一定の効率化が実現している一方で、システム間の連携不足により、全社的な経営情報の可視化が難しいという課題が浮上します。
その結果、各システムからデータを手作業で集計し、Excelで別途まとめている企業も少なくありません。こうした「部分最適」から「全体最適」へ移行するための仕組みづくりこそ、ERP導入の最大の目的です。
中小企業におけるERP導入の成功には、単なるシステム置き換えではなく、部門横断的なデータ統合プロジェクトとして進める姿勢が欠かせません。
現場の担当者や中間管理職を巻き込みながら、業務プロセスの標準化とシステム統一の両立を図ることで、企業全体の生産性を高められます。
また、導入時には既存フローの変更が発生するため、現場との対話と合意形成を重ねながら慎重に進めることが成功の鍵です。
従業員300名以上の企業 ― ガバナンスと拡張性を重視したERP導入を
従業員が300名を超える規模になると、子会社や複数拠点を抱えるなど、組織構造が複雑化します。既存システムが拡大前の体制で導入されたものである場合、業務プロセスとの不整合や運用の非効率化が顕在化します。
この規模の中小企業におけるERP導入では、全社横断的な経営基盤を整備することが求められます。導入プロジェクトには、経営陣の参画はもちろん、外部のERPコンサルタントの知見を活用し、戦略的な視点で要件定義を行うことが不可欠です。
また、システム規模が大きくなるほど、セキュリティや品質の担保も重要になります。導入時には、
- ・データ保護体制・セキュリティ認証の有無
- ・アップデートや保守の対応スピード
- ・将来的な機能拡張性(スケーラビリティ)
などを重点的にチェックしましょう。
長期的な視点で信頼できるパートナーを選定することが、ERP運用を安定させる最も確実な方法です。
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◆ERP導入成功事例 ― リンガーハット社のDX推進
外食チェーンの株式会社リンガーハットでは、全国約 700 店舗と工場・本部を支える基幹システムが老朽化し、機能追加のたびにプログラムが複雑化して「どこを直せばよいか分からない」状態に陥っていました。店舗数や事業構造の変化に既存システムが追いつかず、他システムとの連携も難しいことから、同社は西部電気工業とともに基幹システムの全面リプレースに踏み切りました。その中で採用したのが、マイクロソフト社のクラウド型 ERP である「Microsoft Dynamics 365 Business Central」です。
新システムでは、本部の会計・販売管理、店舗の販売管理、工場の生産・工程管理を Dynamics 365 Business Central 上で一元化。マスタデータを共通化することで二重登録や突合せ作業が大幅に削減され、仕入・生産・販売・在庫といったデータがリアルタイムに参照できるようになりました。
その結果、月次決算の確定が従来より短縮されるなど、管理業務の効率化とスピードアップを実現しています。現在は、この基幹システムを土台として、AI を活用した Web 発注システムやトレーサビリティの仕組みなど、さらなる DX 施策にも弊社と一体となって取り組んでいます。
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本記事でご紹介したように、多くの企業がMicrosoft Dynamics 365 Business Centralの導入でDXを成功させています。 関連コラム:中小企業向けのERPソフト 『Microsoft Dynamics 365 Business Central 』とは? |
◆中小企業がERP導入で失敗しないためのポイント

大企業に比べて導入規模が小さいとはいえ、中小企業におけるERP導入でも失敗リスクは存在します。ここでは、特に注意すべき2つのポイントを紹介します。
1.システムと業務プロセスの乖離に柔軟に対応する
ERP導入によって業務効率化を目指す一方で、現場の業務フローとシステム仕様が完全には一致しないケースもあります。特にクラウドERPでは、標準機能に制限があり、細かいカスタマイズが難しいことが多いです。
そのため、「業務をシステムに合わせるか、システムを業務に合わせるか」という判断が求められます。業界特有の商習慣が強い場合や、変更が難しい業務がある場合は、段階的導入や一部除外といった柔軟な運用設計を検討しましょう。
十分な予算・期間が確保できる場合には、カスタマイズ性に優れたオンプレミス型ERPの導入を選択するのも一つの方法です。
2.経営層・従業員を巻き込み、全社的に推進する
ERP導入は、単なるシステム刷新ではなく、組織全体の業務改革プロジェクトです。
従来の業務プロセスが変わることで、現場従業員には一時的に負担がかかります。そのため、導入目的や期待される効果を丁寧に共有し、納得感を得ることが不可欠です。
また、成功には経営層の強いコミットメントが欠かせません。意思決定者が「どのような経営データをどの頻度で把握したいか」を明確にし、プロジェクトチームがそれに基づいて設計を進めることで、より実効性の高い導入が実現します。
システム統合を成功させるには、部門間・階層間の密なコミュニケーションと協働体制の構築が重要です。
「経営と現場をつなぐERP」を意識したプロジェクト設計こそが、失敗を防ぐ最大のポイントです。
◆中小企業におけるERP導入でDXを加速させよう
この記事では、中小企業におけるERP導入を成功に導くためのポイントを、規模別の視点から整理しました。
導入の第一歩は、製品選定ではなく「自社の課題の明確化」と「導入目的の設定」です。
クラウド型ERPは初期費用を抑えられ、スピーディーな導入が可能な点から中小企業に最適です。
一方、業務特性に合わせた柔軟なカスタマイズを重視する場合は、オンプレミス型ERPも選択肢となります。
どのERPを導入するにしても、最も重要なのは経営課題の解決と業務プロセスの最適化を同時に実現することです。
もし選定や導入の進め方に迷われている場合は、専門コンサルタントに相談するのが賢明です。
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更新日:2025.12.16

