高精度測位技術『RTK』の仕組みを図解で徹底解説!GPS・GNSSとの違いとは?

「RTK」という言葉は聞いたことがあるものの、どのような仕組みなのか、GPSとは何が違うのか、分からないという方も多いのではないでしょうか。
RTKを簡単に表すと、位置の判明している基準局の測位データを用いて測位の誤差を計算し、そのデータをもとに補正をして精度の高い測位をする方法のことです。
本記事では、RTKの特徴や仕組み、GPSとの違いを中心に詳しく解説します。
- 目次 -
◆GPSやGNSS、RTKをサックリとご紹介
GPSやGNSSというのは、どちらも衛星を利用して、地球上の位置を特定するシステム(衛星測位システム)の事を指します。広く知られているGPS(Global Positioning System)は、アメリカが開発し、運用を行っている衛星測位システムの事を指します。
一方、GNSS(Global Navigation Satellite System)というのは、アメリカの測位衛星だけでなく、日本やEU、ロシアや中国の様に、各国の測位衛星を含めて利用した、衛星測位システムの事を指します。現在では、GPSは、GNSSの中の1つの要素です。また、私たちが皆様へ提供をするRTKも、GNSSの中の測位方法の1つです。
このように、GPSは衛星測位システムを指す名称であるのに対し、RTKは測位方法を指す名称であるため、それぞれ異なる概念として理解する必要があります。
以下は、各国の測位衛星の名称です。
アメリカ:GPS EU:GALILEO ロシア:GLONASS 中国:BeiDou 日本:QZSS(みちびき) |
◆衛星測位システムの基本的な仕組み
次に測位衛星を利用して、位置を特定する仕組みを簡単にご紹介します。
■特定の地点で、4機以上の測位衛星が発信した信号を受信する
信号には、様々な情報が含まれております。
受信機が利用する主な情報は、衛星信号がどの衛星の物かを示す「識別コード」と、信号の送信時間を示す「時刻情報」です。
■識別コードと時刻情報を元に、測位衛星との距離を求める
受信した衛星信号から、送信時間と、受信機が信号を受信した時間の差を求め、その時間の差に対して、光速(光の速さ)を掛けた物が、受信機から測位衛星までの距離となります。
また、どの衛星から受信した衛星信号かを識別する為に、識別コードを利用します。
■各衛星までの距離を半径とした、複数の球面より、3次元情報を計算する
各衛星までの距離を半径とした、複数の球面の交点が、3次元情報(x, y, z)です。
但し、この(x, y, z)というのは、初めから、(x : 経度, y : 緯度, z : 高度)になっている訳ではなく、数学的プロセスを経て、緯度経度座標系や、平面直角座標系に変換されます。
◆単独測位と相対測位
■単独測位(コード測位)
前章で説明をした、「衛星を使って、位置を特定する基本的な仕組み」は、単独測位もしくは、コード測位と呼ばれる方法です。この方法は、特定の地点の受信機1台と、測位衛星のみで、位置を特定する測位方法になっております。
■相対測位
相対測位とは、単独測位が受信機1台で、自身の位置を特定する測位方法に対して、複数の受信機で、同じ衛星から発信された信号を受信し、特定の地点にある受信機の位置を、測定する測位方法の事を指します。私たちが提供するRTKは、この相対測位の方法で、位置を測定しています。
相対測位には、D-GNSS方式と、RTK方式の2つの方法があります。
また、実際に測定したい地点の受信機とその他の受信機が半径10km圏内にある事で、衛星軌道や時計に関わる誤差を取り除き、大気層の誤差をある程度低減できる様になります。
◆RTKとは?
■RTK方式
RTKはリアルタイムキネマティックの略で、衛星軌道上にあるGNSS(衛星測位システムの総称)を用いて精度が高い測位をする衛星測位方式の1種です。RTK-GNSSとも呼ばれています。
RTK(Real Time Kinematic)方式は、2つの受信機を使います。片方が正確な位置を把握している受信機である基準局で、もう片方が実際に測位したい地点にある受信機である移動局です。RTK方式では、コード測位を利用し、その上で、搬送波測位という測位方法も利用して、より高精度に衛星と受信機の間の距離を求めます。また、基準局から移動局に送られる補正情報と呼ばれるデータを送信しています。
また、相対測位において、RTK方式とは他に、D-GNSS方式というものがありますが、これは、2つの受信機を利用して、コード測位のみを利用し、位置を特定する方式です。ここまでで登場した、測位方法を、位置精度が良い順番に並べると、以下の様になります。
単独測位(コード測位):誤差数十m~
⇓
D-GNSS方式:誤差数m~
⇓
RTK方式:誤差数cm~
◆RTKの仕組み
RTKの仕組みは、前述の通り、単独測位やD-GNSS方式の原理を利用し、その上で、搬送波測位することで、高精度な位置を測位しています。
■搬送波(はんそうは)測位
搬送波測位とは、受信機に届いた衛星信号の波の数を数えて、位置を特定する測位方法です。衛星から発信された信号の波は、1周期が約19cmです。当然、衛星と受信機の間は、19cmで必ずきれいに割り切れる訳では無いので、「19cmの波×波の数(整数波数) + 端数分」となります。GNSS受信機では、端数部分を、mm単位まで分解する事ができます。ここで問題になるのが、1周期が19cmと分かっていても、波の数(整数波数)は、未知数である点です。しかし、従来の単独測位やD-GNSSの原理を利用する事で、ある程度の地点(本来の地点から数m ~ 数十mの誤差がある地点)までは、特定する事ができます。
ある程度の地点まで絞り込めれば、球面の交点の組み合わせには、限りができます。後は、本来の地点の交点を選定する事ができれば、高精度な位置を特定することができます。この交点の選定において、重要になるのが、移動局と基準局の搬送波位相です。
■搬送波位相 (はんそうはいそう)
搬送波位相とは、衛星信号の波の波形を指します。通常、移動局と基準局の測位地点は違うはずですので、搬送波位相には差が生じます。この差をきれいに抽出する事ができれば、移動局と基準局の相対的な位置関係がわかります。そして、移動局で測位した、実際に取得したい地点の位置(球面の交点)を求めることができます。しかし、搬送波位相に含まれる差は、測位地点の違いによる差だけではありません。
■搬送波位相の差
搬送波位相の差には、以下の成分が含まれます。
●測位衛星から受信機までの距離情報(移動局もしくは基準局)
●誤差成分
・衛星軌道誤差:衛星の位置に関する誤差
・時計誤差:衛星が持つ時計と受信機が持つ時計の誤差
・電離層遅延・対流圏遅延:大気層による衛生信号の遅延誤差
・マルチパス誤差:建物や木などで、信号が反射して到達し発生する誤差
・受信機のノイズ:受信機の電子部品の熱や電磁誘導等による誤差
上記の誤差成分の中でも、衛星軌道誤差、時計誤差、電離層遅延・対流圏遅延の3つは、同じ衛星の信号を、移動局と基準局の両方で受信しているので、誤差成分のほとんどをキャンセルすることができます。但し、マルチパス誤差や受信機のノイズは、周囲の環境の影響や、受信機それぞれの特有の誤差成分となっているので、除去することはできません。
これまで説明しました、RTKの仕組みについて簡単にまとめます。
■RTKの仕組み:まとめ
・コード測位を利用し、ある程度の地点を特定
・移動局と基準局の間が10km程度以内であれば、衛星や時計に関わる誤差を取り除き、大気層(電離層遅延・対流圏遅延)遅延による誤差を大幅に軽減できる
・移動局と基準局の搬送波位相の差を利用して、より高精度に位置を測定
◆最後に
今回のコラムでは、RTK測位技術の基本的な仕組みと、GPSやGNSSとの違いについて解説しました。RTKは従来のGPSによる単独測位に比べ、高精度な位置情報をリアルタイムで提供できる点が特徴です。
本記事を通じて、RTK技術の利便性や重要性について理解が深まれば幸いです。
弊社でのRTKを基軸としたソリューションは、まだ、始まったばかりです。
しかし、皆様が抱える位置情報のお悩み事と、その解決方法を、FIXさせながら今後も取り組んでまいります。
更新日:2025.01.24