Dynamics365 Business Centralの導入における4つの工程と導入費用を徹底解説!

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の「ヒト・モノ・カネ・情報」といった資源を一元管理し、業務効率化や経営の最適化を図るシステムです。
企業のDX推進や業務プロセス改善の一環として注目されていますが、導入を検討する中で「進め方が分からない」「自社で対応できるか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ERPパッケージの代表的な製品である、Microsoftの「Dynamics 365 Business Central」の導入工程について、西部電気工業の支援内容や実績、費用の目安をご紹介します。
ERPの導入を検討している方や、導入支援パートナーをお探しの方に向けて、効率的かつスムーズに導入を進めるための情報を解説していますので、ぜひご一読ください。
- 目次 -
◆はじめに:西部電気工業の導入支援について
西部電気工業のERP導入支援では、プロジェクト全体を一括契約とせず、工程ごとの契約形式を採用しています。この方法は、「品質・コスト・納期(QCD)」の観点で、お客様にとって多くのメリットがあります。
<品質面(Quality)>
各工程の完了ごとに品質チェックを行うことで、問題を早期に発見・対処できるため、全体の品質の向上が期待できます。
<コスト面(Cost)>
コスト面では、都度の契約により要件を明確化でき、無駄なリスクコストを抑えることが可能です。
<スケジュール面(Delivery)>
スケジュール面でも、進行状況に応じた柔軟な調整ができる点が大きな利点です。
以下は、工程ごとの契約と一括契約の違いを、QCDの観点で比較した表です。
工程ごとの契約の場合(西部電気工業の提案) | プロジェクト全工程を一括契約する場合 | |||
メリット | デメリット | メリット | デメリット | |
品質面(Quality) | 各工程の完了時に品質チェックを行うことで、問題が早期に発見され全体の品質が向上する | 顧客側のチェック体制の確立が必要 | プロジェクト全体で統一された品質基準が適用され、各フェーズ間の品質のばらつきが少ない | 問題の発見が遅れ、発見時には対応が困難になる場合がある |
コスト面(Cost) | 工程ごとに詳細な費用を出すことができ、最終的な費用を抑えやすい | 開始時の見通しは立てにくい | 開始時に全体的な費用の見通しが立てやすい | リスクを積んだ費用となるため、費用が高額になりやすい |
スケジュール面 (Delivery) |
進行状況に応じてスケジュールの調整が容易にできる | 計画スケジュールがずれ込む場合がある | 全体スケジュールを一貫して管理できる | 問題が発生した場合のスケジュールの影響が大きくなりやすい |
このように当社では、QCDを重視した支援体制を構築しており、柔軟かつ透明性の高いプロジェクト進行を実現しています。
次章では、各工程における西部電気工業の具体的な支援内容をご紹介します。
中小企業がERP導入で失敗しないためのポイントについても、併せてご検討ください。 |
◆工程1.要件整理
ERP導入を円滑に進めるためには、顧客の現状業務を明らかにし、プロジェクトの方向性や目標を、初期段階から関係者全体で認識することが重要です。
西部電気工業では、現状業務の把握から理想像の策定までを段階的に実施しています。以下では、その具体的な取り組み内容についてご紹介します。
1.As-Is分析
要件整理の第一歩として、まず「As-Is(アズイズ)分析」を行います。As-Is分析とは、現在の業務プロセスやシステムの状態を整理し、課題や改善点を明確にする手法で、業務改善や改革の出発点として活用されています。
具体的な実施内容や期待できる効果は、以下の通りです。
<実施内容>
・As-Is業務フローとして各部門が現在行っている業務や情報の流れを図式化し、 組織内で「誰が、いつ、何をしているのか」を客観的に把握する
<効果>
・各部門、プロジェクト関係者間で共通の理解が得られ、自社独自の業務が明確になる
・非効率な作業や重複作業、ボトルネック(処理の滞る部分)を特定でき、改善の出発点となる
この分析結果は、この後の取り組みである「To-Be」の策定に不可欠です。
2.コンセプトトレーニング
「コンセプトトレーニング」を実施します。
コンセプトトレーニングとは、システムの操作方法を学ぶ前に、システムの設計思想や業務との関係性を理解することを目的としたトレーニングです。
業務改善やシステム定着を成功させるための、重要な準備ステップとして位置づけられています。
具体的な実施内容や期待できる効果は、以下の通りです。
<実施内容>
・Dynamics 365 Business Centralの標準機能の概要を把握する
・会計・販売・購買・在庫など、主要業務の基本的な流れを解説
・業務部門とIT部門が共通の理解を持てるよう、システムの考え方を共有
<効果>
・業務とシステムのつながりを理解し、無理のない導入設計が可能になる
・過度なカスタマイズを避け、標準機能を最大限活用できるようになる
・プロジェクト関係者間で共通認識が形成され、この後のプロセスがスムーズに進む
ERPの導入を成功させるためには、まず「何ができるか」を正しく理解することが不可欠です。
3.CRP(Conference Room Pilot)
Dynamics 365 Business Centralのコンセプトを理解いただいた後は「CRP(Conference Room Pilot/カンファレンス・ルーム・パイロット)」を行います。CRPとは、ERPなど新たなシステムを導入する前に実施される試験運用の手法です。導入後のトラブルを未然に防ぐため、事前にユーザー部門が業務シナリオを用いてシステムを試用し、その適合性を評価します。
<実施内容>
・As-Is分析で把握した業務フローをもとに、試験シナリオを作成し、実際の業務担当者がシステムを操作する
「理論上できる」ではなく「現場で使えるか」を具体的に確認する
<効果>
・自社業務とシステムの適合性を正確に評価できる
・As-Isで明らかになった問題点にフォーカスして検証することで、見落とされがちな潜在的な課題の発見につながる
・現場担当者が操作を通じてシステム理解を深め、導入後の混乱を最小限に抑えられる
4.To-Be定義
「To-Be(トゥービー)」は、導入後に実現したい理想的な業務プロセスやシステムの状態です。CRPで得られたフィードバックを活用し、現実的かつ効果的なTo-Beを策定します。
<実施内容>
1.フィードバックの分析:CRPで得たフィードバックを精査し、課題と改善ポイントを明確化する
2.改善策の策定:業務プロセスの再設計やシステムの調整など具体的な改善策を策定する
3.理想的なTo-Be業務フロー設計:改善策を反映した理想的な業務フローを設計する
<効果>
・組織全体で共通の目標を持ち、ERP導入の方向性を一致させられる
To-Beを明確にし、関係者全員が同じ目標に向かって進むことで、プロジェクト全体の一貫性と成功率が高まります。現場目線の意見を反映させることで、現実に即した実行可能な改革案が生まれやすくなることも利点です。
◆工程2:要件定義
ERP導入において、システム開発や設定作業に着手する前に不可欠なのが「要件定義」です。要件定義では、業務で必要となる機能や処理を明確にし、システムが満たすべき要求仕様を文書化します。
また、標準機能でカバーできない要件についてはカスタマイズの要否を判断し、最終的なシステムの方向性を確定させます。要件定義における具体的な取り組み内容を確認していきましょう。
1.Fit & Gap分析
「Fit & Gap(フィット・アンド・ギャップ)」とは、業務要件に対してERPの標準機能がどの程度適合しているかを評価し、不足(Gap)がある部分を特定するプロセスです。実施内容と、行う際のポイントは以下の通りです。
<実施内容>
・To-Be業務フローで定義した理想の業務要件を基準とし、ERPの標準機能と照合する
・合致する部分(Fit)はそのまま活用し、適合しない部分(Gap)に対しては、カスタマイズ(機能改修)やアドオン開発(機能追加)の必要性を検討する
<ポイント>
費用や運用負荷を抑えるためには、可能な限りカスタマイズを避けて業務をシステムに合わせる「Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)」の考え方が重要です。カスタマイズが多くなるとシステムが複雑になり、将来的なバージョンアップ時の不具合発生、コストの増大といったリスクが高まるためです。
カスタマイズを最小限に抑えることで、導入期間が短縮され、導入後の保守もシンプルになるため、コスト削減につながるメリットがあります。そのため、Gapに対しては本当に必要な機能かどうかを慎重に見極めることがポイントです。
2.カスタマイズ概要設計
Fit & Gap分析でカスタマイズが必要な要件が明らかになったら、具体的な概要設計を行います。
<実施内容(例)>
1.入力画面のレイアウト変更や、業務特有の帳票出力機能などについて設計を行う
2.ユーザーに説明し、フィードバックを受けて修正する
3.最終的にユーザーの承認を得て設計を確定する
<ポイント>
修正後は再度確認を行い、ユーザーの承認を得ることが重要です。カスタマイズ設計を丁寧に進めることで、自社の業務に適した機能を効果的に活用できます。
ここまでの要件定義の工程は、単なる仕様の取りまとめではなく、将来の業務運用と密接に関わる重要なフェーズといえます。ユーザーとの合意形成を図りながら、現実的かつ効率的なシステム設計を目指すことが重要です。
◆工程3:開発
続いて、要件定義で確定した仕様をもとに、実際にシステムのカスタマイズを進める「開発」の工程です。概要設計をもとに、実際のプログラム開発を行います。
カスタマイズ開発
カスタマイズ開発では、自社の業務に最適化されたERPシステムを実現するために、要件に応じた機能追加や調整を行います。
<実施内容>
1.概要設計をもとに、詳細設計を作成
2.必要な機能をERPに実装(カスタマイズ)し、単体テストを実施
3.完成後は、カスタマイズ内容についてユーザーによるレビューを行い、承認を得て次工程へと進む
綿密なレビューを行うことで、仕様の漏れや認識齟齬を事前に防止できます。
◆工程4:導入支援
導入支援では、ユーザーの操作習熟やデータ移行準備など、本番稼働をスムーズに迎えるための準備を行います。
1.操作トレーニング
操作トレーニングは、業務に直結する画面や機能を中心に操作し、業務担当者がシステムの操作方法を習得する工程です。
<実施内容>
・ 業務担当者が、日常業務で使用する画面・機能(例:受注入力、在庫確認、仕訳登録など)を実際に操作
・ 質疑応答やフィードバックの時間を設け、理解度を高める
後続の運用試験はユーザー主体の工程となりますので、ここでしっかりと操作スキル習得しておくことで、運用試験をスムーズかつ効果的に進めることができます。
2.運用試験
運用試験は、システムの本番稼働に向けて、業務面および運用面の両方から最終確認を行う工程です。ここでは、UAT(User Acceptance Test/ユーザー受け入れテスト)を含めて実施し、担当者による操作性の確認と運用手順の検証を行います。
<実施内容>
・UAT:操作性やカスタマイズの業務要件への適合性を検証し、システムが要件を満たしているかを確認する
・運用試験:導入後の業務運用に支障がないかの確認を目的とし、システムの安定性や信頼性を評価する
<効果>
・システムが業務要件に適合していることの最終確認ができる
・問題点や改善点を事前に洗い出し、本番稼働前に対策できる
このように、業務と運用の両面からの最終確認を行うことで、より確実な本番移行が実現できます。
3.データ移行
データ移行では、使用するデータをユーザー側で整理し、実際の移行を想定したリハーサルを実施します。
問題がなければ、本番環境でデータを移行し、システムの正式稼働を迎えます。綿密な準備がトラブルの防止に直結します。
◆工程5:本稼働支援
稼働直後は想定外のトラブルが発生しやすいため、西部電気工業では数カ月間、重点サポートを実施しています。
その後は保守サポートに移行し、問い合わせ対応や定期メンテナンスを通じて安定的な運用を支援します。
◆導入支援まとめ
ERP導入を成功に導くためには、「要件整理」「要件定義」「開発」「導入支援」「本稼働支援」といった各工程を、ユーザーとベンダーが一体となり段階的かつ丁寧に進めることが重要です。
これにより、確実性・柔軟性・コスト効率に優れたERP導入を実現することが可能です。
◆費用感・費用を抑えるポイント
最後に、導入費用の目安をご紹介します。
今回のコラムでご紹介したのは弊社の標準的な導入支援です。
ERP導入にかかる費用は、導入範囲やカスタマイズの規模によって大きく異なりますが、1,000万~8,000万円程度が目安となります。
費用を抑えるポイントは、以下の3つです。
・顧客主体で導入を進める
・ユーザーがCRPやトレーニングに積極的に参加し、操作理解を深める
・業務プロセスを見直し標準機能を活用する
導入を「ベンダー主体」で進めるか「顧客主体」で進めるかでコストは大きく変わります。顧客主体で導入を進めることでベンダーへの依存度が下がり、支援費用を大幅に抑えることが可能です。
さらに、ユーザー自身がCRP(操作検証)やトレーニングに積極的に参加し、システムの操作や業務フローを理解することで、適応の早期化と費用削減につながるでしょう。
また、費用を大きく左右するのがカスタマイズの有無です。業務プロセスを見直し、極力標準機能を活用する「Fit to Standard(システムに業務を合わせる)」の考え方を取り入れることで、開発工数や導入期間を短縮し、結果として全体のコストを抑えることが可能です。
◆西部電気工業の導入実績
西部電気工業では、「Microsoft Dynamics 365 Business Central」を活用した数々の導入実績があります。豊富な経験をもとに、多様な業種・業務に対応したシステム構築を行ってきました。
関連コラム:中小企業向けのERPソフト 『Microsoft Dynamics 365 Business Central 』とは? |
詳細な導入事例は、下記リンクからご覧いただけます。
◆まとめ
今回のコラムでは、西部電気工業のERPシステム導入支援の内容と費用の目安についてご紹介しました。
弊社は多数のERP導入支援実績があり、お客様の業務効率化や経営改善を実現するための最適なソリューションを提供しています。導入プロセスの各段階で丁寧なサポートを行い、安心してシステムを活用できる体制を整えております。
導入に関する詳しい情報やご相談をご希望の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
更新日:2025.06.11