構内PHSの限界とsXGPの可能性―DX・BCPも見据えた次世代業務通信
公衆PHSサービスの終了に伴い、構内PHSを利用し続ける企業・施設では、通信品質の低下や保守部品の供給停止、セキュリティ面での脆弱性など、さまざまな課題が顕在化しています。加えて、災害時や緊急時の通信確保、業務用通信に求められる高い品質・安全性への対応も重要な課題のひとつです。
本コラムでは、構内PHSを使用し続ける影響や課題を整理し、次世代の業務通信規格「sXGP」がなぜ今、注目されているのかを解説します。現場のDXやBCP強化に向けて、通信手段の見直しを検討されている企業様はぜひ最後までご覧ください。
◆ 構内PHSを使い続けることのリスク

医療機関や介護施設、工場などにおいては、今も構内PHSを業務連絡のインフラとして使い続けているケースが少なくありません。しかし、2023年に公衆PHSサービスは終了しており、構内PHSは事実上“延命運用”のフェーズに入っています。このような状況のなかで構内PHSを運用し続けていると、さまざまなリスクが顕在化するおそれが出てきます。
特に深刻なのが、保守・故障対応の不確実性です。公衆PHSサービスの終了に伴い代替機や部品の確保が困難になっており、万が一障害や不具合が発生すると迅速な対応が容易ではなく、全体の運用に影響するおそれがあります。最悪の場合「明日から内線連絡が機能しない」という事態すら起こり得るのです。
そもそもPHSは音声に特化した旧世代の技術であり、スマートフォンのような高速データ通信には対応できません。将来的にさまざまなデータを活用し、社内のDX化を進めたいと考えた際にPHSという技術がボトルネックとなる可能性もあるでしょう。「まだ使えているから大丈夫」ではなく、万が一、障害や不具合が生じたら業務にどのような影響が出るか、インシデントが起きたときに十分な説明責任を果たせるかを今このタイミングで問い直す必要があります。
※PHSサービス終了の背景や影響については、こちらのコラムでも詳しく解説しています
関連記事:PHSサービス終了の影響とは?西部電気工業が提案する次世代通信sXGPという選択
◆ 構内PHS運用の限界

PHS端末の故障時に代替機が入手困難
公衆PHSのサービス終了に伴い、市場ではすでにPHS端末の供給が大幅に縮小しています。同一機種はもちろん、互換性のある端末を調達すること自体が困難になっており、壊れたらそこで終了というリスクを抱えた状態での運用になっています。
一部では中古端末や在庫品でしのいでいるケースもありますが、バッテリー劣化やファームウェア非対応など品質面の不安は大きく、安定した業務インフラとしては心もとない状況です。
PHSアンテナや交換機の供給停止・サポート終了
PHS端末だけでなく、アンテナや交換機といった構内PHSシステムを支えるハードウェアについても、多くがメーカーサポート終了あるいは保守対応の縮小対象となっています。
基地局故障や交換機トラブルが、そのまま全館・全フロアでの通話不能=業務停止につながるリスクを孕みます。代替部品がないために一時しのぎすらできず、老朽化したインフラを前提とした運用を続けるしかないという不健全な状態に陥りやすいのが実情です。
通信品質の不安定化
構内PHSは公衆PHSの電波と同期をとることで電波干渉を防ぎ、安定した通信品質を実現していました。しかし、公衆PHSがサービス終了した現在、その同期が取れなくなることで通話中の音切れや雑音など、通信品質が不安定化するリスクがあります。
特に医療や介護の現場などにおいて、一回の聞き間違いが重大インシデントに繋がる業務では許容できないリスクといえるでしょう。
スマートフォンや他通信規格との連携ができない
PHSは通話に特化した技術のため、スマートフォンや各種クラウドサービス、業務アプリケーションとのシームレスな連携は困難です。電子カルテとスマートフォンを連携させDXを推進する医療機関や、IoT技術を活用し生産ラインの監視・運用を行う企業も増えていますが、PHSからの切り替えが進まないとDXや業務効率化の足かせとなり、情報連携がうまく進みません。
通信障害時のBCP(事業継続計画)対応が不十分
大規模災害や停電、システム障害などの発生時に、構内PHS単体では冗長化やバックアップ回線との切り替えが難しく、BCPの要件を満たせないケースが多くあります。構内PHSは基本的に他の通信インフラ(LTE、5G、Wi-Fiなど)と接続していないため、外部との連絡経路を即座に確保できないという致命的な制約があるためです。
これは、社会的影響が大きい医療や介護の業種にとって致命的であり、患者や利用者の命に直結するリスクもはらんでいます。
◆ 通信手段の見直しが進まない根本的な理由
構内PHSのさまざまなリスクが広く認識されつつあるにもかかわらず、多くの企業・組織では依然として抜本的な見直しが進んでいません。その背景には、次のような構造的な問題があります。
求められる要件が明確化されていない
音声品質や拡張性、BCPなど、業務用の通信インフラとして求められる品質・要件の基準が社内で定義されておらず、構内PHSを刷新する必要性が経営層に伝わらない構造が生まれています。
これらの基準が曖昧なまま運用されていると、通信が止まったら業務にどういった影響が出るのかが想定できず、リプレイスを後回しにしてしまいがちです。
コストを優先するあまり通信の品質が軽視されている
通信インフラの刷新には初期導入費や月額料金、メンテナンスなどに多額のコストを要します。特に経営の厳しい企業ではコストの捻出が難しく、構内PHSの運用を続けざるを得ないケースも少なくありません。
PHS導入当時の設計思想が今も残っている
「音声さえ通話できれば業務が回る」というPHS導入当初の発想が、そのまま数十年以上にわたって引き継がれているケースも少なくありません。しかし、今の現場では業務アプリや電子カルテとの連携など、通信の役割が単なる音声の連絡から情報共有基盤へと拡張しており、設計思想が時代に合わなくなっています。
通信に関する意思決定者が不在・不明確
通信インフラは情報システム部門・施設部門・総務部門など、複数部署にまたがることが多く、導入の意思決定および管理責任の所在が曖昧です。特に中小規模の組織では専門知識を持った技術者が不在なことが多く、現状維持のまま判断が先送りされがちです。
◆ なぜsXGPなのか?次世代業務通信規格の特徴と優位性
PHSを運用し続けるリスクや、見直しが進まない構造的な問題を乗り越えるためには、PHSが果たしてきた「安定・即応・閉域」という特長を受け継ぎつつ、現代のセキュリティ要件やIoT連携にも対応できる規格が必要です。
そこで、構内PHSの後継として最も注目を集めるのが「sXGP(Shared eXtended Global Platform)」です。なぜsXGPが最適解なのか、技術的な特徴を解説するとともに、Wi-FiやLTEなど他の通信方式との比較も併せて解説します。
PHSの使い勝手を継承しつつ進化した通信方式
sXGPは、LTE技術をベースとしながら、無線免許不要で構築できるプライベートLTEとして設計されています。 従来の構内PHSのように構内限定の閉域運用が可能でありながら、高音質・低遅延の音声通話を実現。さらに、PHSでは実現できなかったデータ通信もサポートしており、将来的なIoTネットワークの構築や業務アプリとの統合にも柔軟に対応できます。
通信範囲はWi-Fiより広く安定
免許不要で構築できるネットワークといえば、真っ先にWi-Fiを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。Wi-Fiはコストが安価で手軽に導入できる反面、sXGPに比べると電波干渉を受けやすく、音声通話を前提とした通信には不向きな側面があります。
sXGPはLTEベースの制御方式により、基地局1台あたりでWi-Fiの約2〜3倍のカバー範囲を確保でき、通信の安定性に優れています。また、ハンドオーバー(基地局間の通信切り替え)も非常に滑らかさも優れています。移動しながらの通話にも強く、Wi-Fiで起こりがちな音切れや遅延のリスクを大幅に軽減します。
SIM認証と閉域ネットワークでセキュリティ面も安心
sXGPはSIMによる端末認証と暗号化通信を標準装備しています。
PHSのように暗号化が限定的な方式とは異なり、端末ごとのSIM認証制御が可能なため不正アクセスを排除、外部ネットワークから完全に分離した自営閉域網(プライベートLTE)として運用できるため、医療情報や個人情報など機密性の高い通信にも適しています。
導入の手軽さとコストパフォーマンス
ローカル5Gは通信性能に優れ安定性も抜群ですが、免許申請が必要で設備コストも大きく、中小規模施設では導入ハードルが高いのが現実です。一方、sXGPは免許不要でコストも安価。Wi-Fi並みの手軽さで、LTE品質の通信網を構築できる点が最大のメリットです。
コストパフォーマンスの優秀さもあり、PHSから置き換えるための現実的な選択肢として多くの現場への導入が進んでいます。
なお、sXGPの基本的な仕組みや特徴については、こちらのコラムも併せてご参照ください。
関連記事:sXGPとは?Wi-Fiやローカル5Gとの違いと導入メリットを徹底解説
◆ 西部電気工業が提案するsXGPソリューション
sXGPを現場に導入するには、単に機器を設置して終わりだけでなく、現場環境や業務特性に合わせた設計・施工・運用支援が欠かせません。西部電気工業では、長年にわたる通信インフラ構築の実績をもとに、構内PHSからの移行をトータルで支援しています。
構内PHSからのスムーズな移行支援
現場の構造や利用状況を踏まえた現地調査から始まり、最適なアンテナ配置・システム設計、施工、保守・メンテナンスまでを一貫して対応させていただきます。
アンテナや端末の故障時にも迅速な対応が可能であり、医療・製造などの24時間止められない現場を万全の体制で支え続けます。
多様な現場への導入で培ったノウハウ
西部電気工業は、多様な業種における実運用に基づいたsXGPの導入実績を蓄積しています。
たとえば、現場間や操作室とのグループ通話はもちろん、設備管理の分野では設備異常通報システムとスマホの連携、設備の定期保守・リモート設定、ガス検知器連動アラームなど、現場課題に即した設計ノウハウを強みとしています。
自営網構築によるBCP強化支援
sXGPは自営のプライベートLTE網として運用できるため、災害時や公衆回線障害時にも安定した通信を確保できます。
西部電気工業では、BCPの観点から通信の冗長化設計やバックアップ構成をサポートし、非常時にも止まらない通信環境を実現します。BCP対応の通信インフラを前提にした設計思想が、多くの自治体・企業様から評価されています。
◆ 今こそ通信手段の見直しを
公衆PHSのサービス終了後も構内PHSを継続利用していくのは、通信断や保守不能といったさまざまなリスクを抱えたまま運用していくことを意味します。
sXGPはPHSが得意としていた優れた音声品質や安定した通信をそのまま引き継ぎながら、LTEベースの最新技術によって安全性・拡張性・将来性を兼ね備えた通信基盤を実現します。
Wi-Fiよりも安定し、ローカル5Gよりも導入しやすく、免許申請も不要。加えて、SIM認証による強固なセキュリティとクリアな通話品質で、業務通信に求められる要件をすべて満たします。まさに、構内PHSの正統な後継でありながら、DX時代の通信基盤として進化した選択肢といえるでしょう。 今こそ将来の安心を見据え、DXやBCPにも対応した通信環境への移行を検討してみてはいかがでしょうか。西部電気工業は、現場調査から設計・施工・保守までを一貫して支援し、医療・介護・製造など“止められない現場”を支え続けます。
更新日:2025.12.03