sXGPとは?Wi-Fiやローカル5Gとの違いと導入メリットを徹底解説

sXGP(shared Xtended Global Platform)は、企業が自前でワイヤレス通信ネットワークを構築・運用できる通信規格です。免許不要で、高いセキュリティと安定した通信環境を実現することから、PHS(2023年にサービス終了)の後継システムとして注目されています。
既存のLTE技術を活用できる点も評価されており、さまざまな業界で導入が進んでいるのが現状です。
本コラムでは、sXGPの概要や特徴、他の無線技術との違い、具体的な活用例について解説します。
- 目次 -
◆ sXGP方式とは

sXGP(shared Xtended Global Platform)方式とは、1.9GHz帯の周波数を利用する無線免許不要のTD-LTE方式によるプライベートLTEです(読み方は「エス・エックス・ジー・ピー」)。
プライベートLTEとは、企業などが自ら基地局を設置して構築する専用のLTEネットワークです。日本では、このプライベートLTEの標準規格としてsXGPが定められて います。
TD-LTEは、LTE(Long Term Evolution)の一種で、時間分割複信方式(TDD:Time Division Duplex)を組み合わせた通信方式 です。同じ周波数帯を、送信(上り)と受信(下り)で時間ごとに切り替えながら通信を行います。sXGPでは、このTD-LTE方式を採用し、1.9GHzのPHS周波数帯を活用しています。
なお、sXGPのネットワーク構築には、sXGP基地局(アクセスポイント)が使用されます。これは、プライベートLTEシステム内で通信を行うための中核となる機器です。
sXGPを活用することで、企業や自治体は自社専用の安定した通信ネットワークを、比較的手軽に構築・運用することが可能です。sXGPは、高いセキュリティ性と柔軟な運用性を兼ね備えた通信インフラとして、今後ますます注目が高まるでしょう。
◆ sXGPの特徴とメリット

sXGPは、免許不要で構築できるプライベートLTEとして注目を集めています。高い安全性や優れた電波特性を持ち、災害時にも安定した通信が可能です。ここでは、sXGPの主な特徴とメリットについて詳しく解説します。
免許不要
通常、企業が独自にワイヤレス通信ネットワークを構築する場合、原則として「無線局免許」の取得が必要です。免許取得には総務省への申請 が求められ、無線局の開設には無線従事者の配置などが必須 となるため、導入のハードルが高くなる要因となっていました。
しかし、sXGPで使用する1.9GHz帯は、電波の出力が低く影響範囲も限定的なことから、過剰な管理コストを抑える目的 で、無線免許の申請や無線従事者の配置は不要とされています。
そのため、企業や自治体では比較的手軽に自社専用の安定した通信環境を整備できます。準備期間や各種手続きの負担も小さく、スムーズな導入が可能です。
電波の回り込みが優秀
sXGPの1.9GHz帯は比較的低い周波数であり、電波の回り込みに優れています。この特性により、オフィスビル内の壁や工場の機械設備など、障害物が多い場所や遮蔽(しゃへい)された環境でも、安定した通信が可能です。
また、一つの基地局で半径約100m のエリアをカバーできるため、必要な基地局の設置数を抑えられます。これにより、設備投資や維持管理のコスト負担も軽減されるのがメリットです。
SIM認証による高い安全性
sXGPでは、LTEのSIM認証が採用されています。SIMカードには固有の識別情報(IMSI)が記録されており、端末ごとに利用者を一意に識別することが可能です。また、SIM認証では通信の暗号化キーも管理されるため、盗聴や不正アクセスを防止できます。
さらに、SIMカード自体が物理的なデバイスであるため、複製や改ざんが困難です。これにより、企業の機密情報を扱う通信でも高いセキュリティを確保できます。
災害に強い通信網
sXGPは自営型の通信ネットワークであるため、既存の携帯キャリアの基地局や回線障害の影響を受けにくいことも特徴です。
万が一に大規模災害や通信インフラのトラブルが発生し、公衆回線が利用できない場合でも、自社内に構築したsXGPネットワークを活用することで、安定した「通信」や「通話」を継続できます。
特に防災拠点、病院、自治体施設など、緊急時に通信が不可欠な現場での導入に適しています。BCP(事業継続計画)対策の一環としても有効です。
多様なデバイスでの通信
sXGPは幅広いデバイスに対応しており、さまざまな現場で柔軟に活用できます。
対応端末 |
通信の特徴 |
スマートフォン |
・普段使用しているスマートフォンを、そのままsXGPネットワークに接続可能 |
タブレット端末 |
・現場での情報入力やリアルタイムな情報共有がスムーズ |
IoTデバイス |
・工場のセンサーや監視カメラなどのIoTデバイスから収集したデータを、 |
モバイルルーター |
・モバイルルーターを活用すれば、複数の端末を一括してsXGPネットワークに接続することも可能 |
このように、sXGPは多様な利用シーンに柔軟に適応できることが大きなメリットといえるでしょう。
◆ その他通信技術との比較
sXGPは他の通信技術と比較して、導入しやすさと安定性に優れています。他の通信技術との違いについて、以下の比較表をご覧ください。
項目 |
SXGP |
ローカル5G |
自営BWA |
Wi-Fi |
周波数帯 |
1.9GHz |
4.5GHz帯 / 28GHz帯 |
2.5GHz帯 |
2.4GHz / 5GHz / 6GHz |
免許の有無 |
不要 |
必要 |
必要 |
不要 |
主な用途 |
企業内ネットワーク、 |
スマートファクトリー、 |
広域ネットワーク、 |
家庭内ネットワーク、 |
通信の安定性 |
〇高い |
◎非常に高い |
〇高い |
△中程度 |
通信速度 |
約14Mbps |
最大10Gbps |
最大220Mbps |
最大9.6Gbps |
通信範囲 |
半径100m前後 |
半径1km前後 |
半径約2~3km |
半径約30~50m |
導入のしやすさ |
◎ 非常に容易 |
△ |
△ |
◎ 簡単 |
セキュリティ・制御性 |
〇 高い |
◎ 非常に高い |
〇高い |
△中程度 |
コスト |
◎ |
✕ |
△ |
◎ |
sXGPは、ローカル5GやWi-Fi、自営BWAと比較して、導入費用・通信安定性・手軽さで独自の強みを持っています。
ローカル5Gは通信速度が最大10Gbpsと高速ですが、免許取得や高額な導入費用が必要です。一方、Wi-Fiは導入が容易で安価ですが、電波干渉が起きやすく、通信速度や通信距離も環境に左右されます。
sXGPは1.9GHz帯を利用し、通信距離は半径100m程度と中距離に対応。SIM認証による高いセキュリティも特徴で、免許不要のため初期投資を抑えながら安定した通信が可能です。中小企業や医療機関、工場などでも導入しやすい柔軟性があります。
💡sXGPのポイント
・免許不要で即日から利用可能。
・初期投資・申請コストを抑えられる 業務に必要な「安定性」と「セキュリティ」のバランスが優れている
・導入先の自由度が高く、中小企業や医療機関、工場などでも使いやすい
・通信帯域が限定されている分、干渉が少なく、通信品質が読みやすい
◆ sXGPの活用例
sXGPは、免許不要で高い安定性とセキュリティを両立できる無線通信技術として、さまざまな業界や現場で幅広く活用されています。ここでは、製造業・医療介護機関・オフィス環境・娯楽施設・鉄道施設・災害対策における、具体的な活用例をご紹介します。
1. 製造業:工場内の機器やセンサーのリアルタイムデータ収集
製造業では、設備の稼働状況や生産ラインの状況を常時モニタリングし、生産効率の最適化や不良品の早期発見につなげることが重要です。このような現場でも、sXGPは活用されています。
例えば、工場内の各種センサーやIoT機器がリアルタイムでデータを送信し、中央監視システムに集約する仕組みを構築できます。sXGPは工場内の大型機械や壁、鉄骨構造物といった障害物が多い環境でも電波が回り込みやすく、安定した通信を実現します。
さらに、専用の通信インフラとして自社で柔軟に管理できるため、製造部門の担当者が設備拡張やライン変更を行う際も、柔軟に通信エリアを調整可能です。これにより、将来のスマートファクトリー化にもスムーズに対応できるでしょう。
2. 医療介護機関:スタッフ同士の迅速な患者情報の伝達
病院や介護施設においては、常に患者や利用者の容態を正確に把握し、スタッフ間で迅速に情報共有することが求められますが、sXGPを活用することで、患者情報や電子カルテの安全な通信が可能になります。
具体的には、緊急時の呼び出しやナースコールと連動することで、迅速な対応につながるでしょう。介護施設においても、入居者の見守りシステムや安否確認の自動通知など、安全管理に役立ちます。
また、SIM認証による高いセキュリティを備えているため、院外からの不正アクセスやデータ漏洩リスクも抑えられます。sXGPはPHSの代替としても注目されており、医療機関が自営の無線通信ネットワークを簡易に構築できる点が大きなメリットです。
3. オフィス環境:社員間の連絡+業務アプリの支援による業務効率化
オフィス内の通信インフラとしても、sXGPを活用することが可能です。例えば、社員の内線通話やチャット、ファイル共有、スケジュール管理など、日常業務で活用する各種業務アプリを安定した通信環境下で利用することができます。
sXGPは、Wi-Fi環境よりも通信が混雑しにくく、セキュリティもSIM認証によって強固に保たれます。特に、営業部門や経理部門など、顧客情報・財務情報といった機密性の高いデータを扱う部署でも安心して利用できるでしょう。
また、社員の増減やフロアのレイアウト変更にも柔軟に対応しやすいため、長期的な業務効率化につながります。
4. 娯楽施設:通常時+イベントや展示会でのスタッフ同時の連携
テーマパークや大型イベント会場などの娯楽施設では、多くのスタッフが広範囲で連携を取る必要があります。sXGPは、半径約100mをカバーできるため、少ない基地局で広域な通信エリアを構築可能です。
具体的には、アミューズメントパーク内でのスタッフ同士の連携、緊急時の指示伝達、誘導案内、清掃や保守作業の効率化といった活用例が考えられます。
さらに、展示会や期間限定イベントなど、通常営業とは異なるレイアウト変更が発生する際にも、sXGPなら免許不要でエリアを柔軟に構成できます。
Wi-Fiのように不特定多数の来場者と通信帯域を共有することがないため、スタッフ専用の安定したネットワークを維持することが可能です。
5. 鉄道施設:駅構内や車両内での情報共有や、IoT機器の連携による設備監視
鉄道の駅構内や車両内では、運行情報や安全管理のための通信が不可欠です。sXGPはその安定性とキュリティの高さから、自営PHSの代替手段として注目されています。
例えば、駅構内の監視カメラ映像のリアルタイムで確認したり、車両内の振動・温度センサーから送られてくるデータを集中管理したりといった仕組みを構築できます。通信距離も約100m程度カバーできるため、駅構内の広範囲を少ない基地局で対応可能です。
さらに、既存の公衆回線に依存せず独自のネットワークを構築できることから、セキュリティ面でも安心です。
6. 災害対策:災害時の安定した通信提供
災害時には、通信インフラが被害を受ける可能性があります。sXGPは一般のキャリア回線が障害を受けた場合でも、自営の閉域通信網を維持できるため、緊急時の避難所運営や救助活動の際の連絡手段として活用することが可能です。
具体的には、自治体の防災拠点や企業のBCP(事業継続計画)対策拠点における、避難所運営やスタッフ間の連絡、被災状況の共有、救護活動の支援といった活用方法が想定されます。災害時は通信の混雑やインフラ断絶が発生しやすいですが、sXGPであれば独自の基地局を利用して安定した通信を確保できます。
また、導入に免許が不要なため、事前の準備期間を短縮し、迅速に災害対策ネットワークを整備することが可能です。
◆ まとめ
sXGPは、安定した通信性能と高いセキュリティ性を備えた次世代プライベートLTEです。柔軟な運用が可能で、医療・娯楽施設・鉄道など幅広い分野で活用されています。
免許不要で導入しやすく、災害に強い通信網を構築できることから、中小企業・大企業のDX推進や災害対策、オフィスの通信環境整備にも適しています。
西部電気工業ではsXGPの施工実績が豊富にあり、製造業や医療機関、オフィス等での安定したネットワーク環境を提供いたします。sXGPの導入をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考元
sXGPによって自営通信はどう変わる? ほかの通信方式との違いや活用事例を紹介
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用語検索 – ZDNET Japan
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更新日:2025.07.15