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「基幹システムのリプレースにより、本部と店舗と工場の連携はもちろん、事業構造の変化や事業拡大に対応する基盤を構築することができました。現在は西部電気工業とともに新たなDXに取り組んでいます」

株式会社リンガーハット
内容

長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」、九州を中心に展開する1962年創業の「とんかつ浜勝」などを運営する株式会社リンガーハットは、2013年に基幹システムのリプレースを西部電気工業に依頼。西部電気工業はMicrosoft Dynamics 365 Business Central ※1(以下、Dynamics 365 BC)を用い、本部の会計・販売管理、店舗の販売管理、工場の生産管理・工程管理が連携する基幹システムを構築しました。今回、基幹システムのリプレース背景と効果について、株式会社リンガーハット DX推進チーム 是末 英一氏に詳しく伺いました。

 

株式会社リンガーハット
本社所在地          :〒141-0032 東京都品川区大崎1-6-1 TOC大崎ビル14F

設立                     :1970年6月
代表者                 :代表取締役社長兼CEO 佐々野 諸延
資本金                 :9,002百万円(2020年2月末現在)
従業員数              :正社員 644名/パート・アルバイト5,136名(2020年2月期)
事業内容              :飲食店の経営、食品・食品原材料の製造・加工および販売、経営指導およびフランチャイズ加盟店の募集・指導、財務管理・労働管理事務処理の受託、不動産賃貸に関する事業

 

|グループ全体で700店舗を運営


●御社の会社概要についてお聞かせいただけますか。
リンガーハットグループは1962年長崎市鍛冶屋町に「とんかつ浜勝」を創業し、1974年には長崎ちゃんめん(現・長崎ちゃんぽん)および、ぎょうざを主力商品にした「リンガーハット」長崎宿町店を開店。以来、食の喜びを届け続け、現在はグループ全体で約700店舗を運営しています。

 


リンガーハット1号店 長崎宿町

 

当社は「食の安全・安心・健康づくり」「誠実なお客様対応」「人間性尊重と職場環境の改善」「自然と環境への配慮」「地域社会への貢献」という5つの実践訓を理念とし、「すべてのお客様に楽しい食事のひとときを心と技術でつくるリンガーハットグループ」を使命として活動しています。

2012年に創業50周年を迎え、現在は次の50年に向けてさらなる歩みを続けています。 培われた社会との絆をさらなる飛躍の糧に、これからも皆様に「食の喜び」を届け続けていきたいと考えています。


長崎で誕生した、野菜いっぱいでヘルシーなおいしさ
「長崎ちゃんぽん」「長崎皿うどん」

 

|基幹システムをDynamics 365 BCで構築


●今回、西部電気工業には何を依頼しましたか。
基幹システムのリプレースを依頼しDynamics 365 BCで構築していただきました。具体的には本部の会計・販売管理、店舗の販売管理、工場の生産管理・工程管理のシステムです。構築だけでなく、リプレ―ス後もシステムの運用・監視・保守およびアカウントのマスター登録をお任せしています。

 

●リプレースの進捗状況をお聞かせいただけますか。
基幹システムは3つに分け、段階を踏みながら構築・リリースしてきました。2021年3月、佐賀工場の工程管理をリリースしたことでリプレ―スが完了。現在、すべてのシステムが本稼働に至っています。

 

リリース時期 構築システム
2013年9月 ステップ1
本部の会計・販売管理
2014年10月 ステップ2
店舗の販売管理
2017年10月 ステップ3
工場の生産管理・工程管理
生産管理(佐賀工場、小山工場、京都工場)
工程管理(佐賀工場)

 

|事業構造の変化や事業拡大に対応する基盤を構築

 

●リプレースによる効果をお聞かせいただけますか。
Dynamics 365 BCという汎用パッケージを用いたこと、そして西部電気工業の開発力のおかげで、事業構造の変化や事業拡大に対応する基盤を構築できたのが、当社にとってもっとも大きな効果と言えます。

 

業務面では、マスタデータの一元化を図ることができたのが大きな効果です。以前は複数のシステムに登録する手間があり、しかもデータが一致しなかった場合には、データチェックの付帯業務もありました。さらに、データを連携させるため、CSVに出力し加工してから取り組むといった作業も行っていました。現在はどこかでマスタデータを登録すれば、本部・店舗・工場の間で共有することができます。

 

構築した西部電気工業いわく「本部も店舗も工場も同じパッケージで統一されているケースは少なく、まさに最適化された基幹システム」とのこと。今回のリプレースに携わってきた我々としても嬉しい限りです。ほか、具体的な効果については以下の通りです。

 

<システム全体>

・全社マスタデータの一元化による二重登録の排除

・管理業務の統合による自動連携での効率化(仕入・生産・販売・在庫・勤怠・分析)

・リアルタイムに行えるデータ参照

・事業構造の変化や事業拡大に対応する基盤の確立

・少ないリソースで運用できる

・業務の標準化および標準化によるコア業務のBPO

<本部の販売管理>

・月次決算処理の早期確定を実現(毎月3日 ⇒ 2日)

<本部の財務会計>

・Microsoft 365との高い親和性による容易なデータ加工

・高い拡張性による生産性の向上(関連会社間の自動仕訳処理などをアドオン開発)

<店舗の販売管理>

・店舗業務の作業軽減

<店舗の販売管理>

・店舗業務の作業軽減

 

|システムのブラックボックス化が進行


●基幹システムをリプレースするに至った背景をお聞かせいただけますか。
旧基幹システムはリプレースを決定した2013年から遡ること約20年前、50~100店舗規模を想定し小型汎用機をベースにスクラッチ開発で構築されました。外部ベンダーの協力のもと、運用・保守は社内で行ってきましたが、長年、建て増しのような形で機能追加や変更などを行ってきたしわ寄せでプログラムが複雑化していました。「1カ所変更するだけで他に影響が出てしまう」「テストに膨大な工数がかかる」「不明なモジュールがある」など、プログラム改修による対応に限界を感じていました。

 

加えて、ベンダーも当社も常にメンバーを固定しているわけではありません。また、当社は飲食のチェーン店を全国展開するのがコア業務ですから、情報システム部門のリソースは潤沢とはいえません。担当SEが変わってしまうと、システムを理解することから始めなければならず、日を追うごとにシステムのブラックボックス化が進んでいく状況でした。

 

他システムとのデータ連携も困難になってきたため、2015年に迎えるホストコンピュータのサポート終了を見据えて2013年にリプレースを決定した次第です。


株式会社リンガーハット
DX推進チーム
是末 英一氏

 

|企画に専念して運用・保守はベンダーに任せる


●新システムへの要件をお聞かせいただけますか。
細かな仕様については、ベンダーの提案を見てから判断していくつもりでした。プロジェクトの根幹については、以下の3つを要件としました。

 

<ベンダーによる開発・運用・保守>
社内の担当SEが変わってしまうと手がつけられず、ブラックボックス化が進んでしまった過去の経験から、今回はブラックボックス化させないため、社内にSEは置かず、我々は基幹システムの企画・提案およびベンダーのコントロールに専念。運用・保守は継続的に行っていただけるベンダーにお任せしたいと考えていました。

 

<3段階に分けた導入>
まったく新たなシステムに移行するわけですから、当社としてもテストには時間をかけたいと思っていました。しかし、前述のように当社のリソースには限界があります。そこで、1)本部の会計・販売管理、2)店舗の販売管理、3)工場の生産管理・工程管理という3つのフェーズに分け、段階を踏んで基幹システムをリリースしていきたいと考えていました。

 

<旧システムの焼き直しにならない>
基幹システムには、何より業務を円滑に推進することが求められます。データ連携はもちろん、法改正や業態・状況の変更にも柔軟に対応する基幹システムを目指すため、旧システムの焼き直しにならないことを重視しました。ただし、利用する当社スタッフの業務負担を考慮して、ある程度UIは踏襲すること。また、過去5年分の会計データはマイグレーションすることを要件としました。

 

|二人三脚で新システムを構築できるベンダーを選定


●ベンダーはどのようにして選定されたのでしょうか。
西部電気工業を含め、取引のある3社のベンダーの提案を比較・検討する運びとなりました。今回、比較・検討をする際に以下の点を重視しました。

 

<柔軟な姿勢とフットワーク>
当社に十分なITリテラシーが備わっているとは言い難く、どうしても支援を仰ぐところは多くなってくると思っていました。構築が進めば、要件定義に漏れた機能や追加機能も発生するでしょう。その際、「聞いていません」「別料金です」ではなく、柔軟な姿勢とフットワークで取り組み、当社と二人三脚で新システムの構築を進めていただけるベンダーであれば心強いと考えていました。

 

<スケーラビリティの高いシステム>
本部と店舗、工場が連携する基幹システムで終わることなく、今後も機能拡張や他システムとの連携、別の領域のシステム開発など、随時、改修を行っていくと予想していました。つまり、当社が求めるのは、事業構造の変化に対しても対応可能な基盤となる基幹システムです。毎回のように工数や時間、コストがかかっていたのでは、新システムに移行する意味がありません。高い汎用性と柔軟なカスタマイズに対応できる、スケーラビリティの高いシステムが必要と考えました。

 

<当社の売上規模に見合うコスト感>
やはり、コストは重要です。スクラッチ開発や汎用パッケージという括りの前に、当社の売上規模に見合うコスト感で検討する必要があると考えていました。

 

●西部電気工業を選定した決め手をお聞かせいただけますか。
以前から西部電気工業の柔軟な姿勢とフットワークは高く評価していました。加えて、今回提案していただいたのはスケーラビリティの高い汎用パッケージDynamics 365 BCでした。柔軟なカスタマイズはもちろん、他のマイクロソフト社製品とも相性が良く、スムーズなデータ連携が期待できます。さらに、当社の売上規模に見合うコスト感で提案をしていただきました。これらを踏まえ、西部電気工業をベンダーとして選定しました。

 

|部門の一員とも呼べる西部電気工業

 

●西部電気工業に対する評価をお聞かせいただけますか。
当初は手探りだったこともあり、スムーズさを欠く場面もありましたが、すぐに軌道に乗りました。スタート段階からヘルプデスクを設置していただき、いつでも相談できる環境であったのも良かったと思います。また、システムのリリース1カ月前には、プロトタイプを使った集合研修を行っていただくなど、あらゆるところで手厚いサポートをしていただいたと実感しています。

 

また、西部電気工業によるシステムの運用・保守・監視についても満足しています。月1回の定例会も欠かさず実施しており、今では我々の部門の一員といっても過言ではありません。それほど西部電気工業は、我々にとって重要なパートナーになっています。

 

|DX推進チームはシステムによって人の働き方を変えていく部門

 

●部門名をDX推進チームに変更されたと伺っています。その理由についてお聞かせいただけますか。
これまで我々は情報システムチームという部門で活動してきましたが、2020年の9月からDX推進チームという部門名に変更されました。メンバー自体は大きく変わっていませんが、会社としてDXを推進していく意気込みの表れと言えます。

 

DX推進チームが担うのは、単なるシステム化ではありません。システムによって人の働き方を変えないと、本当の意味でDXとは呼べないと考えています。会社が店舗の店長やスタッフに求めているのは、お客様が店舗で過ごす食事時間をより楽しんでいただくユーザーエクスペリエンスの創出です。しかし、煩雑な店舗業務に時間を取られていては、それも困難です。そこで、我々がDXで店舗業務の課題を解決することで、ユーザーエクスペリエンスを創出するための環境づくりをサポートできればと考えています。

 

|西部電気工業と取り組んでいるトレーサビリティの構築

 

●実際に取り組んでいるDXはありますか。
すでにいくつかのDXの取り組みは始まっています。以下が主な取り組みです。

 

<AI活用によるWeb発注システム>
2019年12月に導入テストを開始し、2021年4月からリンガーハット全店で運用が始まっています。現在は濵かつでの導入テストも最終段階に入っています。

 

このWeb発注システムは、食材の必要数と推定在庫から「店舗ごと」「日ごと」の発注数をAIが自動で算出するシステムです。食材発注は各店舗の店長の業務のため、これまでは店長が日別の売上目標を設定して行っていましたが、新人店長とベテラン店長とでは仕入れの精度に差が生じていました。さらに、発注業務に追われてしまうと、調理や接客の時間を確保することも難しいという課題もあり、このWeb発注システムを導入した次第です。

 

Web発注システムでは、前月の売上・食材使用量・売上予測から必要数、店舗の販売数から食材の使用量を計算する推定在庫をAIが自動算出。店長の業務は、その数字をチェックして発注ボタンを押すだけです。Web発注システムの導入によって仕入れ精度が向上すれば、業務負担の軽減からユーザーエクスペリエンスの創出、食材ロスの削減も期待できます。

 

<トレーサビリティの構築>
現在、西部電気工業と一緒に取り組んでいるのは、基幹システムともデータ連携するトレーサビリティの構築です。事業拡大を図るうえで、何よりもお客様からの信頼を得ることが最も重要だと考えています。そこでポイントになってくるのがトレーサビリティです。これまでお客様から商品に関する問い合わせがあった際、商品を構成する食材の履歴を調べるのに数日要してしまうことが多々ありました。すぐに答えることができなければ、お客様からの信頼を得るのは難しいと思います。

 

もちろん、トレーサビリティの仕組みがなかったわけではありませんが、紙ベースでロット管理されている食材もあったため、調べるのに時間がかかっていました。そこで、西部電気工業と一緒に構築するトレーサビリティでは、生産から倉庫への入荷、加工、店舗への配送に至るまで、すべての過程を紐づけてデータ化しました。例えば、店舗に届いたキャベツのQRコードをスキャンすれば、すぐに加工場所や生産地まで分かる仕組みになる予定です。

これにより、お客様からの問い合わせにもすぐにお答えすることが可能になり、何か問題が発生した際は、どの過程に原因があったかなどの特定が容易になると考えています。

 

このほかにも、西部電気工業にはクラウドの情報共有データベースも構築していただきました。本部から各店舗にアナウンスされる「緊急事態宣言が発令された場合の店舗営業時間」など、リアルタイムに知りたい情報をすぐに確認できるため、情報共有データベースは今後ますます活用されていくと思っています。

 

DXを推進していくうえで、今後も西部電気工業のサポートは欠かせません。
これからも、引き続きよろしくお願いします。


株式会社リンガーハット (右1名)
DX推進チーム
是末 英一氏 

西部電気工業株式会社(左2名)
ソリューションビジネス事業部 ソフトウェアビジネス部 

左より西尾 智幸、丸山 隆久 

 

お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

 

* 取材日 2021年5月11日
* リンガーハット様のサイト
*記載の担当部署は、取材時の組織名です。

※1導入当時の製品名称は、Microsoft Dynamics NAVです。

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