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ERPの代表格「SAP」が抱 える2027年問題とは?解決アプローチを解説

基幹システムの代名詞でもあるSAPを導入する企業は、日本でも少なくありません。ただ、SAPを運用している企業は今後「2027年問題」への直面を余儀なくされており、早急な対策が必要です。

この記事では、SAPが抱える2027年問題の概要や、2027年問題を乗り越えるための有効なアプローチについて、解説します。

SAPの2027年問題とは

SAPは世界で最も利用されているERPの一種で、現在主流のモデルが「SAP ERP 6.0」です。

SAP ERP 6.0の保守サービスが終了へ

組織の業務を一元管理できるSAPは非常に利便性に優れた製品ですが、2027年末にはその標準保守が終了してしまいます。
SAPの保守サービスが受けられないということは、2028年以降、従来通りのシステム運用ができなくなる可能性が出てくるということです。この標準保守サービスの終了を、SAPの「2027年問題」と呼んでいます。

元々、標準保守サービスの終了は2025年に打ち切られることを予定していましたが、現在は2年期間が延長され、2027年末となっています。すでに無償の延長猶予が与えられていることから、今後2027年からさらに期限が伸びる可能性は低いと考えておくべきです。

ERPを扱える人材の不足も顕著に

また、2027年問題へ対処するにあたり、人材の不足も今後顕著になっていくことが懸念されます。多くの企業が2027年までのシステム移行を目指すため、専門のエンジニアは引く手あまたとなり、彼らを確保するための人件費は高騰するでしょう。

希望する予算内で2027年問題を乗り切るためには、早めに人材を確保し、2027年問題の早期解決を実現することが必要です。

2027年問題を乗り切る上でのポイント

2027年の保守サービス終了にあたって、企業が考えなければならないのは、

 ・システム基盤の再編
 ・Unicode対応

という2つの課題解決です。システム基盤の再編は、従来の「SAP ERP 6.0」がこれまで通り使えなくなるため、間違いなく必要になる施策です。システムのクラウド化やWebサービスへの移行、そのほか拡張性の確保など、次世代のデジタル活用に向けた柔軟性を確保しなければなりません。

Unicode対応は、以下で紹介する最新のSAP製品「S/4 HANA」を導入する上で欠かせないプロセスです。現在、ERP 6.0をUnicode以外の文字コードで利用している場合、システムの移行に際してはUnicode化も必要となります。Unicode化は「S/4HANA」を導入しない場合でも、別製品の導入に際して必要になるケースが多く、この点は改善しておくことが重要です。

詳しい2027年問題の解決策については後述しますが、いずれの選択肢を選ぶにせよ、これらの問題へ対処しなければなりません。

2027年問題を解消する3つの解決策

それでは、SAPの2027年問題を解決するためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか。ここでは代表的な3つの解決策について、解説します。

・継続して現行製品を活用

解決策と言えるかどうかは定かではありませんが、結論から言うと、2027年末の保守サービス終了後も現行の「ERP 6.0」を使い続けることは可能です。有料ではありますが、2030年までは別途保守サービスを受け続けることはできるため、迅速な移行が叶わない場合は検討すると良いでしょう。

ただ、最新のSAPサービス各種を十分に受けることができなかったり、拡張性が損なわれたりするなどの問題を抱えているため、おすすめできる方法ではありません。2030年移行もサードパーティの保守を受けることは可能ですが、古くなったシステムの保守コストは高騰する傾向にあるため、ITコストの負担増大を招くこととなるからです。

・SAP S/4 HANAへの移行

多くの会社が2027年問題の解決策として検討‧実行しているのが、最新のSAP S/4 HANAへの移行です。SAPの 「ERP 6.0」とは異なりクラウド化が実現しており、パフォーマンスの面でも向上が見られるため、確かな導入効果が期待できます。

拡張性や柔軟性に優れており、従来のSAP製品活用のノウハウもある程度活かせられるのが嬉しいところです。

・Microsoft Dynamics 365などのSAP以外の製品へ移行

ERPは必ずしもSAPでなければいけない、ということはないため、別のERP製品へ移行するのも一つの手段です。

他社のERP製品と言えば、「Microsoft Dynamics 365」などが挙げられます。Microsoftが手掛けるこちらの製品も、「S/4HANA」同様クラウド型のERPとして大きなシェアを誇ります。各種Microsoft製品との互換性が高いのはもちろん、営業から財務、サプライチェーンまで幅広くカバーできるDynamics365は、SAPからの乗り換え先として増えてきています。

またOracleの提供する「Oracle Cloud ERP」も、SAPからの乗り換え先として人気です。業務プロセスの大半を自動化できる上、Oracle独自のAIアシスタント機能を活用し、スマートな業務環境の整備を促します。

このように、必ずしもSAPだけがERPの選択肢ではないことを覚えておきましょう。

SAPの「S/4 HANA」について

「ERP 6.0」からの移行先として、多くの企業が選ぶのはSAPの最新製品である「S/4 HANA」です。

「S/4 HANA」は2015年に登場したERP製品で、オンプレミスとクラウドのどちらか、あるいはハイブリッドで運用できます。サポート期間は2040年末までを予定しており、当分保守サービスが終了してしまう心配はありません。

機械学習を使った、最新のAI分析が行えたり、カラム型インメモリベースを採用した高速のデータ処理が可能だったりなど、多くの移行メリットが期待できます。さらにUI面においても進化が見られ、ユーザビリティを第一に考えた設計を採用し、PCはもちろん、スマホやタブレットからでも利用ができる利便性を備えます。

マイグレーションに向けた3つの方法

魅力的な機能を多数備える「S/4 HANA」ですが、基幹システムの移行、つまりマイグレーションに至っては、以下の3つの方法が挙げられます。

・コンバージョン方式

コンバージョン方式はブラウンフィールドとも呼ばれる方法で、既存のシステム要件はそのままに、「S/4 HANA」へのデータ構造の変換を実行します。

既存のカスタマイズも引き継がれるので、業務プロセスの再編負担を最小限に抑えられますが、現行の業務フローに問題を抱えている場合、問題ごと引き継がれてしまうため、注意が必要です。

・リビルド方式

リビルド方式はグリーンフィールドとも呼ばれるアプローチで、ゼロから「S/4 HANA」を使ってシステムを構築する方法です。SAPのベストプラクティスに合わせた業務プロセスの刷新が期待できるため、業務フローをリセットして最高のものにしたい、と考える場合に適しています。

ただ、システムのリビルドには多くの時間を必要とするだけでなく、業務フローをゼロから構築‧定着しなければならないため、大規模なプロジェクトとなるでしょう。

・選択データ移行

選択データ移行はブルーフィールドとも呼ばれ、システムのみを先に「S/4 HANA」へ移行する手法です。データについては業務の必要に応じて選択的に移行を行い、不要なデータは破棄してしまいます。

システムのみを先に移行してしまうため、比較的スムーズにマイグレーションを推進できるだけでなく、不要なデータを引き継ぐ手間もかからないため、スマートです。

まとめ

この記事では、SAPの基幹システムが抱える2027年問題と、その解決策について解説しました。

SAPは多くの企業に利用されている、信頼性の高い基幹システムを提供していますが、DXの推進に伴い、その刷新も必要とされています。最新のソリューションである「S/4 HANA」はクラウドにも対応しており、その利便性の高さから多くの注目を集めている移行先です。

基幹システムのマイグレーションにおいても、最近では複数のアプローチから自社の都合に合わせて選ぶことができるため、一度検討してみることをおすすめします。

2023.05.23

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