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現場DX推進にむけて(第2回) 日本におけるDX推進人材確保の現状と今後の展望 ~なぜ伴走サービスが流行るのか~

【人材不足を解消】DX推進の伴走サービスの効果とは

 

1.バズワード”伴走サービス


『DX推進人材確保のための、伴走サービス』。インターネット上でDX関連の情報収集をすると、“伴走サービス”の文言を目にすることが多くなってきています。しかしながら、伴走内容を深掘りして見てみると、「従来のウォーターフォール型開発におけるシステム受け渡し教育工程の焼き増し」であるような内容も、多々あります。

今回のコラムでは、世の中でバズワード化している”伴走サービス”に関して、『なぜ必要とされているのか、本当に必要なのか、どういったアプローチが有効なのか』といった観点で、統計データを基に紐解いていきます。

 

2.DX推進における人材不足


図1 IT部門の要員数の推移
図1 IT部門の要員数の推移

出典:JUAS_IT2024.pdf
出典元データを基に著者が再度グラフ作成
DI値(増加と回答した割合から減少と回答した割合を引いた値)で表示

2019年度から2021年度は、IT部門の要員が「増加している」と回答する企業数が上昇傾向のトレンドを示していましたが、2022年度からはそのトレンドが高止まりしています。また、中長期的に見ればIT部門の要員が「増加している」と回答する企業が減少のトレンドを示していることから、IT部門の要員を増やす方針は一服したのではないかと考えられます。

次に下の図2は、人材タイプ別IT部門要員の充足状況です。

既存のIT機能組織に属する人材に比べ、DXに関わる人員は非常に少ないことが分かります。特に、”顧客向けプロダクト(サービス)企画担当”, “データ分析担当”, “アプリケーション設計・開発(アジャイル)”を司っている「DX推進実行部隊」の人材が、不足しています。

図2 人材タイプ別IT部門要員の充足状況
図2 人材タイプ別IT部門要員の充足状況

出典:JUAS_IT2024.pdf
出典元データを基に著者が再度グラフ作成, 下記の通り, 傾向に応じて人材タイプを丸めている
・DX推進リーダー(IT戦略担当, DX推進担当, 新技術調査担当, 業務改革推進・システム企画担当の統計結果の平均値)
・DX推進実行部隊(顧客向けプロダクト(サービス)企画担当, データ分析担当, アプリケーション設計・開発(アジャイル)の統計結果の平均値)
・既存のIT組織機能(プロジェクトマネジメント担当, インフラ・ネットワーク担当, 情報セキュリティ担当, アプリケーション設計・開発(ウォーターフォール型), 運用管理・運用担当, ベンダーマネジメント担当)

さらに、下の図3は、図2の人材タイプ別IT部門要員の充足状況を、さらにDX推進状況別にグラフ化したものです。

「DXを推進できていると思うか」の設問に対する選択肢(「非常にそう思う」「そう思う」「どちらともいえない」「そう思わない」「まったくそう思わない」)で区分すると、DXを推進できていると自覚している企業ほど、各人材タイプの充足状況が改善される傾向にあることが分かります。このことから、DXを推進するうえで、IT人材の充足は必須課題であると考えられます。

図3 DX推進状況別 人材タイプ別 IT部門要員の充足状況
図3 DX推進状況別 人材タイプ別 IT部門要員の充足状況

出典:JUAS_IT2024.pdf
出典元データを基に著者が再度グラフ作成
n数については割愛
“IT部門担当ではない”の回答はグラフ元データから除外

図1~図3により、次の3つが言えるでしょう。

  • IT部門の要員数を増やすトレンドは一服している
  • 既存のIT機能組織に属する人材に比べ、DXに関わる人員は非常に少ない
  • DXを推進するうえで、IT人材の充足は必須課題である

この状況下で、各企業の対策上位は、次の3つです。

  • 既存社員のスキルアップ
  • 不足スキルを持った人材の採用
  • 外部リソースの活用

 

3.IT部門要員の充足における問題点


ここでさらに、IT部門要員の充足にむけた各種対策における問題点を見ていきます。

図4 売上高別IT部門の経験者採用の対象図4 売上高別IT部門の経験者採用の対象

出典:JUAS_IT2024.pdf
出典元データを基に著者が再度グラフ作成

図4は、売上高別IT部門の経験者採用の対象、図5は、年代別IT組織(IT部門、情報子会社)の既存社員のスキルアップの課題を示しています。

図4では、売上高1兆円以上の大企業は、専門職/マネジメント層といった即戦力採用に積極的で、1兆円未満の企業は、20~30代の今後の育成を前提にした層の採用が多いという特徴があります。

図5 年代別IT組織(IT部門、情報子会社)の既存社員のスキルアップの課題
図5 年代別IT組織(IT部門、情報子会社)の既存社員のスキルアップの課題

出典:JUAS_IT2024.pdf
出典元データを基に著者が再度グラフ作成

また、図5からは、既存社員のスキルアップにおいて、40代/50代以上の層は”動機付け”、”時間の捻出”に課題を抱えている一方で、経験者採用の対象ともなっている20代/30代は”適切な教育コンテンツ”、”実践の場”に課題を抱えていることが分かります。

 

4.伴走サービスを用いた解決策


以上の課題の有効な解決策のひとつに、伴走サービスを用いた外部リソースの活用モデルがあります。

図6 伴走サービスを用いた外部リソースの活用による解決図6 伴走サービスを用いた外部リソースの活用による解決

この伴走モデルは、ビジネス上の課題を解決しつつ、IT人材を育成するという特徴があります。

伴走初期段階では、足りない知見の補填として外部リソースを頼りつつ、40代~50代以上の世代は方針決めなど、ビジネスに対する知見や経験を基に活躍します。

伴走後半段階では、流動性がある外部リソースの特徴を生かし、徐々にリソースを解放しながら、20代~30代の社内人材を参画させ、実践の場を活かしながら育成を効果的に行います。時間の捻出に課題の有る40代~50代以上の世代は、あくまで後進の育成やガバナンス維持を行い、本人たちの動機付け、モチベーション維持もケアします。

このような伴走モデルは、即戦力の採用が難しく、また潤沢に採用/IT投資をかけることが難しい日本の中小企業に有効であると考えます。

 

5.【人材不足を解消】DX推進の伴走サービスの効果とは (まとめ)


本コラムでは、世の中でバズワード化している”伴走サービス”に関して、『なぜ必要とされているのか、本当に必要なのか、どういったアプローチが有効であるのか』といった観点で、統計データを基に紐解きました。

図6を参考にしながら、ITベンダーから提案される伴走サービスが、自社の要望にマッチするものであるか、それとも単純なバズワードへの対応であるのかを見極めたうえで、採用をご検討いただけると幸いです。

以上DX推進人材確保のための、伴走サービスについて紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。弊社は株式会社マクニカ様との協業により、さまざまなソリューション導入の支援を実施しております。気になる点やご質問、問い合わせ等ありましたら、下記よりお問い合わせ下さい。

 

2024.07.25

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